公認心理師メモランダム 映画『こちらあみ子』と発達の問題について 060918
『こちらあみ子』は、
裏『さかなのこ』か、
っていう感じの映画でした。
主人公あみ子を演じた大沢一菜の存在感がすごい。
監督の演出がすごい。
音楽も素晴らしい。
なにより、この物語を書いた作者がすごいと思いました。
よくこんな話を書けましたね。
想像だけで紡げたとは思えませんから、モデルとなった子となんらかの接点があったのでしょうか。
今村夏子の同名小説が原作です。
これはデビュー作といいます。
『こちらあみ子』で、第26回太宰治賞と第24回三島由紀夫賞を獲得した由。
舞台は広島。
主人公は、かなり変わった小5の女の子あみ子。
前半はまあまあ、あみ子の素っ頓狂な行動も、かわいいものにおさまってます。
優しい家族や周囲の人に受け入れられていく、ほのぼのストーリーなのかなぁと思ってました。
音楽もほっこり系。
しかし、彼女の悪意ないけど失礼な行為は、摩擦を引き起こし続けます。
良かれと思った行動すら、マイナスの連鎖を産み、それによってあみ子の周りの人が壊れていく。
〔「あみ子、それだけはやめとけ」って、呟きながら観てました〕
あみ子に翻弄される母を、尾野真千子が好演してました。
ダメ親っていう見方される方もいますが、父(井浦新)も相当懐深い良い人ですよ。
それでもまだ小学生のあみ子は可愛げがあったけれど、中学生になったら、周りが求める社会性の要求水準は高すぎて、完全に置いてけぼり。
中学生のあみ子は、痛々しい。
誕生日にもらったトランシーバーに向かって必死に発する「こちらあみこ、こちらあみこ、おーとーせよ」に応えられる人は現れるでしょうか…
原作者は1980年生まれ。
使い捨てカメラ、ハンドマイクカラオケ機がガジェットとして効果的に使われてます。
ということは、この物語の設定は、1980年代後半から90年代にかけてなのかな。
あみ子のような子達に日常接しているので、とても人ごととは思えませんでした。
あみ子のような子を育てている親御さんが観たら、胸掻きむしられることでしょう。
あみ子は学校や地域でほったらかしにされてましたものの、2020年代は多少ましなっているはず。
文字が読めないような状態で、そのまま手を差し伸べられないということはなくなっていると信じたいです。