農業分野における課題:担い手の減少と高齢化②
農業は私たちの生活に欠かせない重要な産業ですが、その担い手の高齢化と減少が大きな課題となっています。特に基幹的農業従事者の年齢構成を見ると、その深刻さが浮き彫りになります。具体的な数字を見ていきましょう。
基幹的農業従事者とは
基幹的農業従事者とは、15歳以上の世帯員のうち、普段の仕事として主に自営農業に従事している者を指します(雇用者は含まれません)。これらの人々は、農業を基盤とした生活を送っており、日本の農業を支える重要な存在です。
現在の状況
基幹的農業従事者の数は年々減少し、高齢化が進んでいることは、以前の記事でも紹介しました。農林水産省の農業構造動態調査によれば、2023年の基幹的農業従事者は116万人で、2022年の農家さんの平均年齢は68.4歳となっています。
年齢層の分布
基幹的農業従事者の年齢層を見ると、70歳代以上が全体の59%を占め、60歳代が21%となっています。つまり、高齢者が大部分を占めているのです。一方で、20年後に基幹的農業従事者の中心となる50歳代以下の人数はわずか23.8万人、全体の約2割に過ぎません。
今後の展望
このグラフから見てわかるように、今後20年で、現在の基幹的農業従事者の約8割がリタイアすることがわかっています。これにより、担い手の減少が一気に進むことが予想されます。単純に考えて、いままで10人で管理していた日本の農地を、たった2人で管理しなくてはならない未来が待っているのです。ひとりでいままでの5倍の面積の農地を耕作しなくてはならず、超効率化することが求められています。もはやスマート農業はただの流行ではなく、必ず達成しなくてはならない技術革新といえるかもしれません。
未来の食卓への影響
このまま農業の担い手が減少したとして、それがわたしたちにどのように深刻なのかと思われる読者もいらっしゃるかもしれません。そこでこんな思考実験をしてみましょう。「仮にこのまま担い手が減り、農業の効率化が進まなかったとしたら?」
とうもろこしを例に挙げてみましょう。
とうもろこし農家の8割がリタイアして人手が足りない
とうもろこし畑の80%が耕作されず放置
出荷されるとうもろこしの量が大幅減少
みんなが食べたいのに供給が減る
とうもろこしの価格は5倍6倍と高額になる
これでは家計が大ピンチ
とうもろこし食べたかったけど諦めよう
とうもろこしは高級だから今夜は餃子をつくろう
おなじことがほかの農作物でもおこる
え、白菜もニラもキャベツもニンニクもひき肉も高いんですけど
仕方ないから買える食材だけ買って帰って餃子つくろう
今夜はもやし入り餃子(ひき肉少なめ)です
食べたいものを買うのではなく毎日何かしら諦めないといけない
いろいろな食材が適正な価格で店頭に並んでいることがあたりまえの現在ですが、いま当たり前に食べられる品質と価格の食材が、未来では当たり前ではなくなってしまうかもしれません。国産でも外国産でも、食べたいものを自由に選べる現在とは異なり、未来では買えるものを食べる。それは非常に寂しいことです。
まとめ
基幹的農業従事者の年齢構成から見えるように、日本の農業は深刻な担い手不足と高齢化の課題に直面しています。この問題を解決するためには、スマート農業などの最新技術を導入し、農業を効率化することが重要です。また、若い世代に農業の魅力を伝え、参入を促す取り組みも欠かせません。未来の食卓に高品質な食材を並べ続けるために、今こそ農業の未来を見据えた対策が求められています。
参考文献
農林水産省. 「スマート農業をめぐる情勢について」. 2024. URL. 参照日: 2024年7月30日.