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一澤帆布工業の相続問題から考える

概要

一澤帆布事件についてのまずは概要をお伝えします。三代目一澤信夫氏が事業にかかわってこなかった長男信太郎氏に店の権利は渡さず、三男の信三郎氏に引き続き経営を任せる内容の遺言となっていました。これが一つ目の遺言です。

しかしこれとは別に長男の信太郎氏が別の遺言書を扱っていたと主張しました。これが第2の遺言書で、こちらのほうが一つ目の遺言書よりも新しいもので、相続においてはこちらの内容が優先されます。

そのため三男の信三郎氏が遺言書が偽造されているとして遺言書の無効確認の訴えを提起しました。その遺言書には名前の記載に普段使っていなかった「一沢」の表記があり、無効確認の訴えをするのには十分な根拠がありました。

しかし一審では無効といえる十分な証拠がないとして棄却され平成16年に信三郎氏の敗訴が確定しました。しかしその後別件の訴えにより、第一審の判決を取り消し、信太郎氏が提出した遺言書を無効とする判決が出ました。

これが一澤帆布事件の概要です。これからいくつかのことがわかります。

最高裁判所の判断力

1. 普段使わない字(一沢)を使ったが、最高裁判所でも無効といえる十分な証拠がないとして棄却したのです。つまり遺言書に少々の不審な点があったとしても最高裁判所では有効だとみなしたということです。

どの子供にもいい顔しがちな親

2.仮に長男の出した遺言書が有効だったとしたらどういう状況が想定できるでしょうか?三代目の信夫氏が遺言書を作成した時点で多くのことに配慮することができない状況にあったことが想定されます。親からしてみれば長男であろうが、三男であろうが自分の息子なのでかわいいと思います。だからこそ両方にいい顔をしようとして整合性の取れない遺言書を作成してしまったのかもしれません。

子供が裁判を始めることは家族関係の崩壊につながる

3.2のケースと同じで長男の出した遺言書が有効だったケースでなおかつそれが普段信夫氏が言っていたことと違った状況だったとします。そしてそれまで長男と三男はそこまで関係が悪くなかったとしましょう。

納得しない三男は話し合いで解決できなければ裁判で決着をつけざるを得ません。そしてそれは数年という決して短くない期間争うことになります。そして判決が出た後、お互いに水に流して仲良くするなんてことは難しいのではないでしょうか?

まとめ

これが自筆証書遺言をする場合の問題点となります。

  • 遺言書に少々の不審な点があったとしても最高裁判所では有効だとみなす。

  • 親が子供全員にいい顔をする遺言書を複数枚書きがち。

  • 子が争えば修復できない関係になる。

このような問題を考えると自筆証書遺言よりも公正証書遺言のほうが残される家族のためには妥当だと思われます。

相続について気になることがありましたらお気軽に山本裕一行政書士事務所にお問い合わせください。

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