見出し画像

分娩後から翌日の退院まで

大切な名前

やがて、綺麗にして連れてこられた娘を抱っこしました
小さくてふにゃりとしていて、ダウン症の特徴である少しつり上がった目と低い位置の耳を持っていましたが、しっかりと人間の形をしていました
浮腫みもなくスッキリした顔立ちで口角が下がった口が笑えるくらい私にそっくり、長い手足は旦那に似ていました

私は抱っこしながら、そっかそっか、と呟いていました
何が、そっかなのか、ただ口から漏れてきた言葉です
そっかそっか、抱きながら涙を落としました

そっかそっかそうなんだそっかそっか

娘と会話していたつもりだったのかなぁ
よくわかりません

旦那も抱っこしました
分娩前は辛すぎて抱っこできないかも、と言っていましたがしっかりと抱っこして静かに泣いていました

手形足形も取って、沐浴をさせてもらい、手作りの産着を着せ、3人で家族写真も撮ってもらいました
へその緒も欲しければもらえましたが、私は事前に要らないと伝えていました
娘に持っていってもらいたかったので、へその緒は彼女に繋がったままでした

しばらく後、分娩室から病室に戻り、旦那と私と娘で過ごしました

私はずっと娘を撫でていました
あまり触ると状態を悪くしそうだったので、布団の上から柔らかく、優しく
一生で一回の娘との短い団欒の時間が終わり、旦那は帰っていきました

あとは娘とふたりきりです
夜も一緒に過ごしたい旨を看護師さんに伝えると、布団の下に敷いている保冷剤を定期的に交換してくれることになりました

涙は出るし、体もきつかったですが、棺に入れる娘宛の手紙を書きました
この時点で思っていることを文字にして書くと、もう、涙なんか止まるわけかありません
大事で大切で大好きで、でも、生かすことができずにごめんなさい、と泣きながら書きました

ちなみに、男の子なら旦那が考えた名前、女の子なら私が考えた名前と決めていて、女の子だったので私が考えた名前になりました
公開はしませんが、いい名前だと思います
戸籍に残るわけではない名前です
でも大事な名前です


娘と見た朝の空

夜中に何度か起き、娘を覗き見てまた眠るを繰り返し朝を迎えました

迎えに母が来て私は帰りますが、娘は病院に置いていきます
後で火葬業者が引き取りに来て決められた日取りで火葬し、私達がまた病院まで遺骨を引き取りにいきます

娘と過ごす最初で最後の朝
窓際の棚を動かして外が見えるようにして、2人で外を眺めました

娘と2人で朝日を眺めました

一見するとしあわせな一文が、こんなにも悲しい
空を見ながら娘を見ながら泣きました

9時過ぎには母が来たので2人で娘を棺に入れました
布団に寝かせ、棺の中には小さなぬいぐるみ、私と旦那が折った多量の折り紙、お菓子、手紙、母が買ってきたお花を敷き詰めました

そして棺を閉めて看護師さんに渡し、お別れです
会えたのは昨日なのに、もうお別れです

永遠のお別れです

こうして、私の中期中絶は終わりました




たった350グラム、たった24センチ、それだけの命
生かせられなかった命
それでもあなたが大事、命を終わらせたのが私でも、それでもあなたが大事
矛盾していても、残酷だと言われても、私はずっとあなたが大事だと思い続ける

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?