書評②「ビジネスプロセスの教科書」

永らく製造業で開発業務に携わっていた私が、部署異動をきっかけにDXを推進することになった。私へその指示をした上司も、当時はDXとは何かをわかっていなかったであろう状況の中で、ひとまず関連書籍を読み漁り、引き当てた1冊。DXを指向する以前にまずやるべき内容が掲載されており、そもそもここにすら至っていない現状が多数散見され、大きな気づきを与えてくれた。

本書は、ビジネスプロセスを体系的に理解し、実践に結びつけるための理論と具体例を豊富に取り上げており、業務改善や組織運営に携わるビジネスパーソンにとってとても参考になるのではと思う。

著者は、ビジネスプロセスの設計と管理に関する豊富な実務経験を持つコンサルタントであり、その専門性が全編にわたって反映されている。ビジネスプロセスの基本的な概念からスタートし、プロセスの可視化、分析、改善手法、さらに最新のデジタル技術を活用した効率化まで、段階的に解説されている。特に、複雑な理論を分かりやすい言葉で説明しているため、専門知識がなくても理解しやすい。

本書の構成は、理論編と実践編に分かれており、学びを現場で即活用できるよう工夫されている。理論編では、プロセス設計における基本的なフレームワークが解説されており、「プロセスとは何か」「なぜプロセス管理が重要なのか」といった本質的な問いに答える内容となっている。特に、プロセスマップの作成方法や、ボトルネックの特定方法についての説明は具体的で、実務に役立つ。

一方、実践編では、業界ごとの事例が豊富に取り上げられている。たとえば、製造業における品質管理のプロセス改善や、サービス業における顧客体験向上を目的とした取り組みなど、幅広い分野の具体例が紹介されている。これにより、読者は自身の業務に近いケースを参考にしながら、改善アイデアを得ることができる。また、失敗事例も取り上げられており、理論だけではなく現場での実践がどのように困難を伴うか、リアルな視点が提供されている点も良い。

さらに、本書の特筆すべき点は、現代のデジタルツールを取り入れたプロセス改善について詳しく触れていることだ。著者はAIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した事例を挙げ、これらがどのように業務効率化に寄与するかを具体的に解説している。これにより、読者は従来のアプローチだけでなく、最新のテクノロジーを取り入れたプロセス改善の可能性について学ぶことができる。

ただし、本書はあくまで「教科書」であり、その性質上、抽象的な部分も多い。具体的な課題に取り組む際には、自社の業界や規模に応じたアレンジが必要となる。また、理論の習得だけでなく、現場での試行錯誤を繰り返す実践力が不可欠であることも、意識すべき点だろう。

総じて、「ビジネスプロセスの教科書」は、現代のビジネスにおけるプロセス管理の重要性を改めて認識させてくれる一冊。理論と実践がバランスよく組み合わされており、ビジネスプロセスの改善に取り組むすべての人にとって、貴重なガイドとなる気がする。特に、働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、業務の効率化や柔軟な運営体制の構築が求められる企業にとって、本書が提示する方法論は、競争力を高めるための強力な武器となるのではと思う。

ビジネスの現場で即実践したい人や、組織全体の効率化を目指しているリーダー層にとって、本書は役立つ一冊になるだろう。読後には、プロセス管理に対する視点が大きく変わり、日々の業務改善に向けた新たな一歩を踏み出せるだろう。わたしもさっそくいろいろと真似させてもらった。

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