偏見日記#7
14時前に乗り込んだ博多行きのグリーン車は空いていて、仰々しい茶色のシートたちが人間なんかに乗られまいと集団ストライキでもしているみたいだった。
当然私はグリーンな奴らのストライキなぞお構いなしに指定の席に座るのだけれど、なんだかやけに座り心地が良くない。A席が南側なせいでやたらと眩しいしリクライニングは想像よりも速く沈んでビックリして急ブレーキをかけたら首が痛いし左の肘掛けは何かの拍子にパカパカと開いてうっとおしい。
どこら辺を走っているのかと思ってGoogleマップを開こうとするとちょうどトンネルに入って電波が悪いし、モバイルオーダーサービスを使おうとスマホでQRを呼び出そうとすれば新大阪を過ぎているせいで使えない。久々に見かけた車内販売には生来の人見知りのせいで声すら掛けられない。
昔からそうだ、見えっ張りなくせに緊張しいで機を見るに鈍。思いつきで動くくせに変なところで優柔不断。そもそもグリーン車に乗ることになったのもカレンダーを読み間違えて出発日を前日だと勘違いしていて早割で予約していたら5日ほど前にひょんなことから間違いに気付き急遽予約を取り直すことにしたらもはや普通指定席の早割期間は過ぎていて、グリーン車の早割はまだ期間内だったからせっかくの長旅だし疲れないようにとグリーン車にしたらこの始末、慣れないことはするもんじゃないやっぱりおれはどこか抜けている……。
ああいけない、いつのまにやら憂鬱な気分に。
グリーン車に乗ってるのに、気付けばブルーになっている。