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I. 銀行で保険商品を買ったら(2)

買った途端に元本割れ! 

 私が「年金受取総額保証付変額個人年金保険 」を契約した顛末の続きです。

 行員さんは、私の400万円の普通預金で、2つの金融商品を契約するように誘いました。変額保険については、「元本保証」、ドル建て個人年金保険では「円高」という二つのキーワードで素人主婦=私を説得したのです。

 年金受取総額保証付変額個人年金保険の仕組みは、以下の図の通りですが、少し解説します。

 まず、「一時払保険料」、最低300万円を銀行に払います。実は、その時点で、「契約初期費用」、つまり銀行に手数料を払うことになるのですが、行員さんは、「手数料」(契約初期費用)をとる、ということは私には説明しませんでした。もしかしたら、パンフレットには書いてあったかもしれません。でも、「増える」図ばかりが目に入り、きっとそこには目を向けなかったのでしょう。

 なので、契約後、渡された保険証書に現在の価額として200万円台の金額が印字されたときに、私は初めて「手数料を差し引かれるのだ!」と気づいたのです。

 私が預けた300万円は、その後「保険会社が運用し」、それが将来私が受け取る「年金」つまり、少しずつ「返してもらえる」お金の元手になります。なので、原資は私のお金です。銀行が預かって、その間、保険会社は私のお金を「自由に運用して」、あとから少しずつ契約者である私に返す、という仕組みでした。うまく考えたものです。

 「年金」という言葉にも騙されました。私企業が、国が将来払ってくれる「国民年金」と同じ「年金」という言葉を使っていいものでしょうか?銀行にとっては、「ばかな客が預けたお金を年に1回、返す制度」以外の何ものでもなかったのですから。

 投資のプロである「保険会社」にお金を託して増やしてもらう、というとなんだか聞こえがいいですが、要するに私が「預けたお金」を保険会社は自由に運用する、ただそれだけのことです。また、年金、といっても、国の年金は、生きている限り払ってもらえるものですが、保険会社の年金は、原資が尽きれば終わりです。そしてそれはもともと自分のお金です。

 さて、この商品では、お金を預けただけでは損をするかもしれない、と思わせてしまうので、なんとか「自分で決めている感」を持たせるために、顧客という名の「カモ」に「運用目標」を定めさせます。目標額を「運用」によって達成したら、そこで将来受け取る年金原資の額が決まります。

 運用は「投資のプロ」が行います。預ける方はまったくの素人。「プロが間違えるはずがない」と、思ってしまうのが普通の感覚です。行員さんは、運用目標は「20%増の360万円ぐらいがいいのではないですか?定期預金ではこんなに増えませんよ」と誘います。定期と比較したら、その当時は何に投資してもマシ、と思える金利でした。欲張りな私は「捕らぬ狸の皮算用」をし、30%増の390万円を目標にしました。たしかに、定期では10年経っても390万円にはなりません。

 ただし、10年の据え置き期間中、どんなに元本が増えても、目標額が達成されたらそこで運用はやめることになっています(契約者の目標額が年金原資の上限なのです)。契約者の金額は絶対これより増えません。

 一方、目標額を達成しない場合には満期まで10年間運用し続けます。運用期間終了時の金額が「年金原資」となります。元本保証なので最低限300万円は保証される、というのが売りです。つまり、「最悪、減ることはありません」。そして、満期(10年)後は、15年にわたり計算上は最低でも年20万円ずつ受け取れるというのです。しかし、さらにここにも罠があります。「年金管理費」というのがあり、「年1回の年金支払い開始日に年金原資から毎年控除されます」と書いてあります。つまり、ここでも手数料がとられるのです!

 10年かけて「保険会社が」運用に失敗して原資が300万円以下であっても300万円は保証されるとはいえ、毎年手数料が差し引かれた金額しか自分の手元には戻ってきません。これで、元本保証と本当に言えるのでしょうか?
さらに、年金という名の分割払いでなく、「一括」で受け取ろうとすると、基本保険金額の90%または運用期間満了時の積立金額のいずれか高い方になります。(つまり、元本より少ないこともあるのです!!)

だから、一括受取にする場合は「元本保証」ではありません。

 「年金受取」ですが、「15年間の年金受取総額で基本保険金額の100%を最低保証します。」とあります。しかし、年金受取期間は15年しか選択できません。インフレがおこったら「元本金額」(私の場合300万円)を20万円ずつ15年かけて満額受け取ってもお金の価値は目減りしている、ということになります。

 行員さんは、何度も「元本保証」という言葉で私を魔法にかけました。「15年間、毎年20万円臨時のお小遣い(もともと私が預けたお金で、銀行のお金ではないです)が入ってくるのは嬉しくないですか?」とも言われました。確かに、20万円が毎年一回口座にはいってきたら、ボーナス気分が味わえるでしょう。その頃には孫もいるかもしれないから、「お小遣いにしてあげられるかなあ」みたいな妄想も浮かんできます。

 でも、「保険会社の」運用がうまくいかなかったら、その後15年も私のお金は凍結されて小出しにしか出せず、かといって一括受取にしたら、銀行に預けているにもかかわらずお金は減っても文句は言えない契約でした。定期預金にするより悪い結果になっていたかもしれません。元本保証されるなんて、きちんと契約書を読めば夢幻(ゆめまぼろし)のことだとわかります。

 そして、パンフレットには、実は「運用期間満了前に解約した場合の解約払戻金 額には最低保証はありません。」でも、行員さんは、「元本保証」ばかりを強調しました。まるで魔法の言葉です。

 折り悪しく、私がその保険商品を購入した直後、「リーマンショック」がおこり、私の預けた300万円はあっという間に100万円以上の損失をだしたのです。たしか、最低のときは192万円ぐらいでした...

 その時に解約していたらその金額以下の「解約返戻金」となっていたでしょう。「元本保証」は、満期まで預けている時のみ適用される条件だったのです。

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