ママさん薬剤師のお茶会面談会 ~現状の薬剤師紹介会社と薬局経営を踏まえて~
■はじめに
ビックアイランド株式会社、代表の岡村信二と申します。
当社は、私が20年以上調剤薬局チェーンの本部業務に携わってきた経験を活かして、調剤薬局の経営支援業務(システム支援、経営改善支援、店舗引退相談、店舗展開支援)を行っている会社です。
調剤薬局のM&A事業を行っていると、薬局さんの損益計算書など各薬局さんの財務の中身を詳しく見させていただくことが多々あります。
その中で私の感じた事と、可能性レベルではありますが、実現できれば現状の薬局の利益確保に大きく貢献できるのではないかと考えていること(ママさん薬剤師が現場に戻るときに薬局さんから紹介会社へ支払われる薬剤師紹介料にスポットを当てて)を今回は書いていこうと思います。
弊社にもお付き合いのある薬剤師の紹介会社がいくつかございます。
薬剤師の紹介会社を批判する内容ではもちろんございませんので、こんなこともあるんだな、くらいで流してもらえると嬉しいです。
こちらの投稿でわからないことや、詳細を伺いたいことがございましたら、Xや当社のホームページからお気軽にご相談ください。
本題に入る前に今日のポイントとしてこちらを掲載します。
・◎は正社員として残業があったとしても、家庭に特段問題はなく、就業ができるといったことにします。
・〇は、ほぼ毎日OPENからラストは大丈夫ですが、18時以降は急いで帰らなくてはならないといった方です。もう一つは、定年退職後のパートとして就業している方とします。
・△はお子さんを送っていった後に、就業する薬局へ、帰りも薬局から幼稚園などへ迎えに行かなくてはいけないが、10時から16時くらいであれば、就業可能といった時間制限のある方とします。あとは定年後パートの方です。
今回の話をするために、ざっくりとした形で記載をしておりますので、当てはまらない方がいることも承知しております。温かい目でご覧いただけますと幸いです。
■注目点
ここで今回のポイントである、☆マークがある場所に注目をしてください。
女性のおよそ20代後半から30代半ばくらいまでに☆マークがあります。
・☆については、産休制度がない薬局さんへの就業や、出産のタイミングでご主人の転勤などがあり、現場を離れて子育てに専念している方、薬剤師として働いていない方としています。
現状はこの方々が3年~5年ほど現場を離れて、さて現場に復帰をしようと考えたときに、ママさん薬剤師にとって戦いの場となっています。
ママさん薬剤師さんのご意見
・出産前は年収550万円くらい、もらいながら管理薬剤師もやったことある
・今も数週間現場に入って感覚が戻れば前くらい働ける。
⇒間違いないと思います。数週間で感覚は多くの方は戻りますし、バリバリ働けます。
・子供がまだ小学生だから、自宅から車で30分圏内では就職したい。
・残業になって帰りが遅くなるのはつらいので、管理薬剤師は遠慮したい。
⇒もちろんこれは当たり前です。家庭が優先なのは間違いありません。
薬剤師さんとしての代わりの方はたくさんいても、母親の代わりはいませんから、ここは優先して当たり前だと思います。
薬局さんとしてのご意見
①面接の話し方を見ているとバリバリ働けるとは思うが、その保証がないし、一度人材確保で失敗をしているのでいきなり正社員としては。。。
②前は管理をされていたかもしれないが、実力が戻るかな。
③しばらく管理薬剤師として配置できないなら、男性の管理薬剤師に配置できる方の紹介をもう少し待とうかな。
面接では絶対に言いませんが、心の中では大半の採用担当者、薬局社長がこのように思っているそうです。食事会の時などによく耳にします。採用費がもう少しどうにかならないかと。
ここに下記の、紹介会社の要素も入ってきて薬局さんの採用はより複雑になります。
■薬剤師紹介会社の現状と薬局さんのお気持ち
①世に多くある一般的な薬剤師の紹介会社様の紹介料は年収の30%から35%。
年収500万円の方の紹介を受けて、採用した場合、薬局さんから紹介会社様へ150万円から175万円の支払いが生じています。
パートの方の場合でも、週32時間勤務、時給2,000円といったごく一般的な数字を参考に紹介料を計算してみます。
理論年収と言われるのですが、
(週の就業時間32時間)×(時給2,000円)=64,000円(1週間のお給与)
(1週間のお給与)64,000円×52週間=3,328,000円 (パート薬剤師さんの理論年収)
3,328,000円×30%~35%=998,400円~1,164,800円(紹介料)
実はパート薬剤師さんの方の採用にも約100万円前後の紹介料が薬局さんから紹介会社様へ発生しています。
これだけの報酬があるので、紹介会社様は血眼になって、パートさんを受け入れてくれる薬局さんを探してくれるといった紹介会社様を使う強みも、もちろんあります。
採用費が辞職時のリスクと合わさって高額ということ。これが薬局さんが薬剤師さんの採用をとても慎重になる大きな理由です。
早期退職時の返金制度もという薬局さんにとっての救済処置もございます。入職から1か月~3か月以内のタイミングで辞められたとして、50%の返金という仕組みもございますが、100万円支払って50万円は返ってきますが、50万円はまるっとなくなってしまいます。
薬局さんの正直な気持ちの答えとして
A.ブランクがあり、実力が未知数ですぐに辞めてしまうかもしれない方に100万円超えの紹介料は払うのが怖い。失敗して50万円無くなるなら、現状いる方々にもう少し頑張ってもらおうかな。
もう一つは、正社員で雇ってしまって、もし面接で話されている実力が、想像と違った。数週間でブランクが戻らず、正社員としての雇用継続が難しくなってしまった際に、辞めてもらうことが難しいことです。(もちろんこれは今の日本の国の決まりで、薬局に限ったことではありません。)
ここで男性の求職者もそうじゃないか、とご意見が聞こえてきそうです。男性社員はそのまま雇用をして、実力と違った場合に薬局さんは正直凄い困られています。よく相談を受けます。
ではなぜ、ママさん薬剤師にはスタートはパートでどうでしょうかとなるのか、そうママさんだからです。家庭を優先してパートとして就業してくれるのではないか。と薬局さんの淡いリスク回避への期待が雇用形態の提案に現れています。パートであれば有期雇用ということで最悪辞めてもらうことができるからです。これがママさん薬剤師さんが高給交渉できない理由と正社員スタートを切るのが難しい理由です。
A.実力が分からない方を採用して、辞めさせられない場合に困ってしまう。パートで採用できるなら伝えてみよう。男性にはパートって伝えた瞬間逃げられちゃうけど、ママさん薬剤師さんは、あまり他の店舗への選択肢も少ないだろうから、言うだけ言ってみよう。
これが答えです。
■ママさん薬剤師と薬局さんの間で解決したいこと
①ママさん薬剤師のブランクをなるべく作らない
②フル復帰できるママさん薬剤師の実力を、採用する薬局さん採用前に知っている
③紹介料がかからない
この3つが解決できるとしたら、薬局さんにとっても、ママさん薬剤師にとっても良い形になるのではないかと私は考えます。
①のブランクをなるべく作らない
週に1回でも10時から16時くらいの時間で働いてみるということです。
介護施設のお薬を応需してる薬局も増えてきて、外来調剤だけでない薬局さんも多くなってきています。
中には火曜日にまとめて介護施設の処方箋が届いて、水曜日に調剤、監査をしてお薬のカレンダー配置、木曜日に配達といったところもあると聞いています。この水曜日に人手を借りたい薬局さんがあるはずです。
②フル復帰できるママさん薬剤師の実力を、採用する薬局さん採用前に知っている
この問題は、基本的にその方のコミュニケーション能力によるところが多いような気もしています。配属になった薬局さんで、その店のルールに従って、自己流があったとしても柔軟に順応できるかという能力です。
その方が入って、今までギリギリでも問題なく回っていたことが回らなくなってしまっては採用担当としても後悔が大きいです。
それは①の週に1回働くことで、ある程度のコミュニケーション能力、順応力があるかは薬局さんも判断がつくのではないでしょうか。
③紹介料がかからない
ママさん薬剤師が復帰する際に紹介料がかかるわけですが、①の実現ができていればまずは今、週に1回働いているところに相談をすると思います。
就業環境がママさん薬剤師にとって難しい状況だった場合それはなくなりますが、それは週に1回しばらく働いている途中で退職の意向が入ると思います。
週に1回気持ちよく働けているところであれば、フルタイム復帰できるタイミングで、まずは今の薬局さんにフル復帰したいのですが、枠はありますかなどの相談がくるでしょう。
■今回の提案と、紹介料との比較
前述させていただいた正社員年俸500万円の紹介料150万円から175万円。
パート復帰の際の紹介料100万円と比較します。
週に1回、
時給1,500円×1日6時間=9,000円(1日のお給与)
9,000円×52週=468,000 1年間のお給与です。
2年で約100万円、3年で150万円ですので、週1回勤務2年ではパート採用紹介料、週1回勤務3年で正社員採用の紹介料とほぼ同額です。
■薬局としてのメリット
・薬局内の他の従業員さんとのコミュニケーションの取り方を事前に判断できる
・もちろん仕事能力も判断できる
・正社員採用して早期退職のリスクが少ない
・早期退職時の機会損失と紹介料の〇〇%が戻ってこないという支出が抑えられる
■ママさん薬剤師にとってのメリット
・週1回働くことで、その職場の環境を知ることができる
・もしも紹介会社を使い、他の薬局さんへの復帰を考えた際にも、丸〇年ブランクという扱いではなくなり年収交渉が有利に働く
・スーパーのパートなどの職種と比較すると高時給で週に1回働くことができる
・調剤業務、監査業務など、ご結婚前にやっていた業務なので業務をイチから覚えるなどのストレスが少なく業務が担当できる
■ママさん薬剤師の実力
ご結婚前、ご出産前には、もしかしたら1薬局の管理薬剤師をされていたのかもしれない、2人~3人の薬剤師をまとめながら、マネジメントをしていたかもしれない。
新卒者の職場導入研修を任されていたかもしれない。
そういった実績と実力もある方々が薬局特有のOPEN~閉店まで入れないと。。。という縛りがどうしてもある中、能力が発揮できずにいる、そういった場面を何度も見てきました。
時間制限が比較的少なくなってきた、在宅調剤に力を入れている薬局さんには充分なママさん薬剤師さん採用への需要があるのではないかと考えています。
■さいごに
この機会の創出として、地域のカフェなどを貸し切って、お子さんも連れて、薬局さん3社くらいとママさん薬剤師さん数名をお呼びして会っていただき、和やかな雰囲気の中でそれぞれお話をしてもらおうと思います。
ママさん薬剤師さんからはこれまでの経験に、現状の勤務希望日と、フルでの現場復帰は〇年後に考えているなど。
薬局さんからは現在〇棟の在宅施設を応需していて、〇曜日にまとまった調剤業務があるからこの曜日の入れるタイミングで来てほしいというような内容で双方マッチングできればと思っています。
お茶会の予算として、薬局さんから数万円の代金をいただき、それをすべて実施に協力をしてくれたカフェへお支払いしようとも考えています。
協力してくれる、地域の皆さんには喜んでもらえる環境を作っていきたいと思っています。
この記事の反響がありましたら、反響の多かったママさん薬剤師が多くいらっしゃる地域で実施をしたいと思います。
薬局業界に長くお世話になっている私の目線から、働きやすい環境と、雇いやすい環境の折衷案がないかと考えた、個人の見解ですので最後までお読みいただきありがとうございました。
弊社では、介護施設応需の為、日々奮闘されている薬局さんを応援する、服薬管理システムのご提案を行っております。
もしこの企画がうまくいった場合は、弊社の介護施設で使う服薬管理のシステムのデモ会を薬局さん向けに開催させていただければと思っています。
■本当の最後
本当の最後に紹介会社様へのフォローをさせてください。
現在の薬局さんはクリニックモール薬局や、病院門前などの大型薬局を除くと、月の技術料200万円~300万円程の薬局さんが平均的な数値だと思います。
月の技術料200万円の薬局さんの売り上げは大体月600万円程、年間でいくと7,200万円程です。
その中から利益となると、3%から5%というのが調剤薬局の一般的な数値です。
額でいうと216万円~360万円程です。これが現在の地域の薬局さんの年間の利益額です。
人材採用に失敗をして50万円、もう1名追加で採用して150万円、合わせて200万円。恐ろしくないですか?紹介会社様への支払いで、1年間働いてきた利益が無くなります。
そういった内容の損益計算書を、薬局さんからの相談の際に私は何度も見てきました。またこのパターンですねといった感じです。本当によくあります。
これが家賃などの固定費も含まって、いくらかの上下があるということは記載しておきます。全部の店舗さんがという意味ではないです。
紹介会社様も、自社の力で薬剤師さんを充分に採用できる大手薬局チェーンというよりは、採用に多少苦戦されている中小薬局さんへの薬剤師さんの紹介で、大部分の売り上げを立てられていると思います。
これまで使っていたママさん薬剤師の採用費が中小薬局の方で多少浮いてくると、中小の薬局に金銭的な体力がつきます。
体力がつけば、今まで考えていなかった店舗数拡大等の経営投資へ回すことができるでしょう。そうなれば店舗拡大の際に補充をしたい若手男性薬剤師採用など本当に必要なところにしっかりとお金が使えるようになると思います。
中小薬局の採用失敗における収益圧迫が大手寡占の一歩への手助けとならないよう、そこになにか活路を見いだせないかというテーマでママさん薬剤師面談会の記事を書かせていただきました。紹介会社様にはご了承いただけますと幸いです。