
哲学,量子力学,数学の共通点:虚数

量子力学の初歩段階で、いきなり虚数がでてくる。
量子状態の重ね合わせを数式化するとき、状態Aである重みをX、状態Bである重みをYとすると、量子状態Φ=X×A+Y×Bとなり、XとYは複素数になる。
複素数?
複素数って、a+i×b, (iは虚数)として表されるもの。
状態の重みが虚数ってどういうことか?
量子の位置と運動量を求めようとする数式で、なぜ虚数なんかが登場するのか。
虚数とは二乗してマイナス1になる想像上の数であり、イマジナリーナンバーの頭文字から i と名付けられている。
想像でしかない i が登場した途端、すっかりやる気をなくした。量子力学の基礎を学んで世界の真理を理解しようと意気込んでいた私にとって、肩透かし。なんだか煙に巻かれたようで先に進めなくなってしまった。
そこで、雑誌ニュートンの虚数の特集号でざっくり学ぶと、最初は15世紀のイタリアの数学者ガルダノが虚数のアイデアを提案、16世紀にフランスの数学者で哲学者のデカルトが虚数 imaginary number と命名、17世紀のスイスの数学者オイラーがオイラーの公式に発展、17世紀のドイツの数学者ガウスが複素平面を発明。
複素平面は高校数学で学ぶが、水平線である数直線のゼロから垂直に虚数軸を書き入れたもの。これで複素数が可視化されたもの。
この複素平面を見てひらめいた。
虚数というのは、値がない。i も100i も、数直線上には表せられない。
ということは、量子力学において、波動関数が収束する以前の、量子重ね合わせ状態と同じく、iは位置が特定できないことと同じ。
これで数学と量子力学とが虚数で結ばれていると理解した。もともと数学の世界で独自に発展した虚数という概念が、宇宙の謎にせまる量子力学で必須のアイテムになっていることはほんとうに驚くべきことだけど。
また、哲学における夢と虚数との共通点にも気づいた。
夢の中では、時空がなく、意味しかない。夢で登場する人物やものはあくまで想像上のものであり、長さや重さというった実体はなく、単に情報、意味、イメージでしかない。
この夢の状態は、虚数と同じだ。
前回の投稿で、夢とは、脳内回路に刻まれている自分の過去全ての生命が経験してきた記憶に触れていることだと述べた。
すると、夢の中に真実があって、現実世界で見えているものはほんの僅かな世俗的なものではないか。
であれば、量子力学や夢と深いところで関係している虚数とは、想像上のものではなく、虚数こそが真実なのではないか。リアルに見える実数は、単なる現実であって、真理を表していないのではないか。
実際、iの2乗はマイナス1で、iの4乗は1であるから、iさえあれば、全ての数学が扱える。1だけではマイナス1を表現できない。iならできる。
であれば、実は1より、虚数 i のほうが世界の構造を支える、より根本的な数字ではないか。
また、1の値は1しか取り得ないが、iの値は存在しない。2乗する前のiは数直線に乗らず、単なる記号にすぎない。違う言い方をすれば、1はそれにしかならないが、iは可能性そのもの。
このように虚数に対する味方がひっくり返りました。もしかしたら虚数 imaginary numberではなく、真数 true number と呼ぶべきかと思います。