【3話】夢の実現に向けて、資金調達の戦い
親父さんの言われるままに電話して、アポイントを取った先は、魚肉ソーセージなどで有名な大企業の「マルハ」。しかも相手は、財閥の御曹司、中部由朗常務でした。
忙しい店舗での仕事の合間を縫って、手書きの事業計画書、資金計画書を持って、いざ売り込みに行きました。
本間の計画は、「赤のれん」の旗を全国ではためかせたい!全国200店舗を出したい!その熱い想いだけでした。
初めてお会いしたのは六本木の喫茶店。
企画書を広げながら、「赤のれん」の他店舗展開の夢を熱く語りました。
しかし、本間の熱いプレゼンを聴き終えた中部さんの反応は一言。
「名店は1店でいい」
「え・・?」
「名店は1店しかないから、名店なんです。『赤のれん』を他店舗展開する理由がわかりません」
会話はそれで終わってしまいました。
本間ができるのはお礼を言って去ることだけでした。
「親父さん、ダメでした・・・」
せっかくの親父さんのコネでしたが、全くダメだったことを話すと、
「本間、6ヶ月だけ待っておけ」
「いや、でも・・・」
「いいから、待っておけ。その間他の会社に売り込みに行くなよ」
訳もわからないまま、本間は親父さんに言われた通り、待つしかありませんでした。
それから、1ヶ月、2ヶ月経過しましたがまだ何も動き出しませんでした。
ただ待つという時間は本当に長いものです。
何度か親父さんにも相談しましたが、ただ一言
「返事を待て」
だけでした。
あれから、夏も盛りとなった8月。
この年はやけに暑い夏で、外では朝からセミがずーっと鳴いていました。
さぁ、今日も忙しいランチタイムの始まりだ!
みんなで気合を入れて腰巻を回し直したその時、
「ジリリリリリリーッ!!!」
一本の電話が鳴りました。
「お待たせして申し訳ない。先日のお話、前に進めましょう」
待ちに待った中部さんからのお電話でした。
電話をいただいたのはお話してからちょうど6ヶ月目のことでした。
「いよっしゃーーーっ!!!やったー!!!」
親父さんと大騒ぎ!
やっと、やっと夢に描いてた計画を前に進めることができるのです。
この感動した味を一人でも多くの方に届けることができるのです。
この日ほど嬉しかったことはありません。
またひとつ、本間の人生が大きく変わる出来事があった日でした。
そこからお店を閉めた後は、親父さんとで寿司を食べ、六本木のフィリピンパブで朝まで大騒ぎしたのはいい思い出です。
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・・・つづく
*この物語は、ラーメン屋の代わりに“クロコ”としてスープ作りに命を燃やす男たちのストーリーです。今では当たり前となったラーメン屋のスープ外注を請け負う「業務用ラーメンスープ」ですが、それがどうやって生み出されていくのかの誕生秘話です。
*本記事はクックピットSTORYから抜粋したものです。
URL:https://cookpit.jp/story/
【会社情報】
クックピット株式会社
『ラーメンを健康にする唯一のスープメーカー』
【執筆】
取締役副社長 外薗史明