#料理本リレー に参加してみた
主婦と生活社の料理本編集部 @ryourinohon からの呼びかけで始まった #料理本リレー 【私の好きな料理本】でバトンをいただきました。
しかし、Instagramから記事を公開したので2000文字制限に引っかかり、大幅に削っています。
そこでこちらでは、全文を載せてみます(いらん?)。
本のセレクトは、すでにたくさんの本の制作に関わる方々がこれでもか! な勢いでステキ本や名著を紹介されていますので、私からはCOOKBOOK LAB.運営らしく、少し視点を変えてお届けしています。
■こんな本が作れちゃうなんて! と驚愕した
『MODERNIST CUISINE at Home
モダニストキュイジーヌ・アットホーム 現代料理のすべて』
KADOKAWA、2018年9月発行
もともとは2011年に発表された5冊セットの『MODERNIST CUISINE』をコンパクトに1冊にまとめたものの日本版です。著者は、科学技術者で博士で天才で、若くして自分の会社をマイクロソフト社に売却し40歳で引退した大金持ちで、とてつもないグルメで料理好きのネイサン・マイアーボールドと、シェフのマキシム・ビレット(となっているけれど、ネイサンが言うところのラボには24人以上の本制作チームスタッフがいるらしい)。
家庭向けに再編集されているためか、巻頭ではアメリカの元祖カリスマ主婦マーサ・スチュアートが序文を寄せています。
でも!
ええ、ええ、ここに納められている実験の結果明らかになった科学に基づくレシピが家庭で即必要になることはないでしょうが、知ってるのと知らないのとでは大違いなんじゃないか、なんでも強火で焼いちゃうのがいいってわけじゃない、わかりましたっ! て感じで視覚とデータで理解できます。
写真がまたすごくて、電子レンジを縦にぶった切ったかと思えば、細かな調理工程写真、シズル感たっぷりなステーキなどなど、406ものレシピが収録されていて。
だから料理好きだけじゃなくて図鑑好きにも響くはず。『子供の科学』を毎月食い入るように読んでた元子どもにはたまらん本だと思います。
難点は、超高額であること。税込み18,700円(笑)。 ←発売後1年間は15000円+税だった
上製本で、約27×34×4センチ、3キロ越えの大型本だもの、仕方がないか。
だってこんな本、日本では作れないですよ。
いや、どうやって編集するんだ、誰がプロデューサーになるんだ、誰が調理して実験して撮って書くんだ!
と果てしなく続く道だけが見えてしまいます。
チームビルディングが最初の高い壁になるって…。
いやあすごいですね、アメリカって。とアホみたいな感想しか言えなくなる料理本です。
勢いで本家の5巻セット(英語だ)も欲しくなること請け合い。
(以下リンク貼りますが、一時的に在庫切れになってる!)
■料理本はアートブックである
『料理書のデザイン
いま知っておきたい100冊 “おいしさ“を伝える見せ方とアイディア』誠文堂新光社、2017年7月発行
私が料理本を買う時は、そのデザインや構成に惹かれて買うことも多いです。
たぶんこれは編集者だったら共感いただける人が多いのではないかと思います。
中でもデザイン性に優れた料理本は、レシピ云々とは別に、どうしても手元に置いておきたい種類のもので、そんな思いはとりわけ本書の著者、鈴木めぐみさんとならガッツり共有できるはず。
鈴木さんとは、カフェカンパニーが東京・紀尾井町でカフェを併設した料理本専門書店「COOK COOP BOOK」で店長を務めていらした頃に知り合い、料理本好き同士のシンパシーを交換し合いました(たぶん)。
そんなこともあり、この本が発売になった時は速攻で入手して舐めますように読み(できるだけ開かないようにして)、出版記念イベントにも駆けつけ、お久しぶり!と言い合えたのがいい思い出です。
本書は、デザインに関わる人はもちろん、料理本編集者も参考になる内容。
どうしても料理本は入れ込む要素が多くなるので、いかにデザインで整理していくかといったツボがそれぞれの本のアートディレクターによって語られています。
駆け出し編集者はぜひ読んで欲しい。
ちなみに用紙構成まで記載されてるのが地味におもしろいです。
■圧倒的センスのタイトルを持つ本
『作りおきサラダ』
主婦の友社、2013年7月発行
この本が売れたのはもう7年前、2013年のことか! と驚きましたが、それというのもついこの間までつくりおき本だらけだったような気がするから。
本書のタイトル、「作り置き」と「サラダ」をかけて『作りおきサラダ』にしたセンスにとにかく当時は驚きました。
だって作り置きって常備菜のことでしょう? サラダって葉物よね? なんで作り置けるの? となるでしょう。
私のママ友周りでは男子母たちから火がついて、タイトルのギャップから口コミが広がり、「野菜たっぷりレシピで便利よ」の声で何人もの人たちが購入していました。
内容は皆さんご存知の通り、主婦の友社にたっぷりストックされているであろうプロ料理研究家のレシピをテーマに沿って再構成されたもので、これだけ作れるようになったら一生困らないし、アレンジは無限大だと思います。
野田琺瑯の保存容器が並ぶ表紙も、作り置きブームもここから始まりました。デザインは細山田デザイン事務所。 ←こちらもツボ
私自身は奥付を見て、あれ、このお名前に見覚えが? と思って取り出してみたのは同じ主婦の友社の『デリつまみ・バルつまみ』。
おしゃれ過ぎない洋風つまみが楽しくて、ちょこちょこ開いておかずの参考にしていたのですが、ビンゴ、同じ編集さんのご本でした。
時々、そんなことがあります。
そういう時、料理本って、著者だけの本じゃないよなと思います。
タイトルが最高な本といえば、この料理本リレーで何人もの方が挙げられている栗原はるみさんの『ごちそうさまが、ききたくて。』(文化出版局)はもはや鉄板ですが、SHIORIさんの『作ってあげたい彼ごはん』(宝島社)も傑作だと思うし、はらぺこグリズリーさんの『世界一美味しい煮卵の作り方』(光文社新書)の潔さに脱帽です。
耳残りがよくてリズミカルに内容も示す最高のタイトルは、うんうん唸りながら考えたところで出てこないのが常。
これらを担当されたセンス抜群の編集者にただただリスペクトを送ってしまう私です。
■手前味噌本
そんなわけでダメ編集者な私は毎回、タイトル決定には大変苦労していたんですが、これだけはツルッと出てきました。
ホテルニューオータニに乗り込んで作っていただいた『本当に旨いサンドウィッチの作り方100』(イカロス出版)、2014年3月発行。
普通の食パンで作る(お洒落パンなし)サンドウィッチだけで100レシピ、ヨコイチ画像のみ、材料表はスペックの扱いというコンセプトは、イカロス出版が得意とする航空機図鑑に通じるものがあります。
ただ、サンドウィッチの重ね順だけはちゃんとお伝えしたくて、巻頭で、パンやバター、野菜や卵などの具材やマヨネーズなどは全部キリヌキにして、宙に浮かせるデザインで表現したのだけがこだわりです。 ←後に『ゴーゴー!バーガー』で8割のレシピで実現。
本書はありがたいことにアマゾン総合1位もしばらくの間いただけて、夢見心地気分を楽しませていただきました。
この本の企画発案のキーマンには今も心から感謝しています。
今年から料理本だけを紹介していくサイトCOOKBOOK LAB.com の運営を始めたのもあって、#料理本リレー は同業ながら楽しくて楽しくて、毎日追いかけてはスタッフの皆さんのリアルを楽しませていただいています。皆さんの投稿によって、奥付で見ただけのお名前が急に近くなったというか、マンモス校の同じ学年だけどクラス違いで話したことはないけど知ってる、みたいな近さになったのが嬉しい。
て、子どもの多い時代に育った年代にしか通じないですねw
これからもリレーを楽しみにしています。
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