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定年後も会社勤めを続ける理由と心境の変化

毎日仕事に行くのが楽しいと言える人は少ないかもしれませんね。私もかつては会社勤めが嫌だと感じていました。
しかし、60歳の定年を迎えてから早一年が経ち、今も同じ職場で働いています。なぜ定年後もこの職場に留まっているのか、そして私の心境がどのように変わったのかを、少しお話ししたいと思います。

会社勤めが嫌だった一番の理由

しばらく子育てに専念していた私は、子どもたちが少し成長すると、実家の母に預けながら不定期でパートタイムや派遣の仕事を始めました。
やがて現在の会社で働き始め気が付けばもう16年が経ちました。
しかし、その間も毎日のように「会社に行きたくない」と感じていました。
働くこと自体が嫌というより、ただ「家にいたい」と思っていたのです。

私の両親は自営業で、事務所も自宅にあったため、母がいつも家にいてくれました。「家に帰れば母がいる」という安心感は、私にとって大きな支えでした。
フルタイムで働き始めた当時、下の子は小学6年生、上の子は中学生でしたが、私自身が母に家にいてほしいと望んでいたため、子どもたちに寂しい思いをさせているのではないかと感じていました。

変わりゆく働き方

今では、フルタイムで働く女性が増え、保育園に子どもを送るお父さんも目立つようになりました。
多くの家庭で夫婦が協力し合い、素晴らしいバランスを保とうとしているのを見て、本当に尊敬しています。
もちろん、すべての家庭が理想的なパートナーシップを築いているわけではないでしょうし、どんな形であっても働きながらの子育ては大変だと思います。
私も、家を出るときに後ろ髪を引かれるような思いで仕事に向かうことが多々ありました。

今苦労しているお母さんたちにお伝えしたいのは、「子どもが成長すると、いつも一緒にいてくれるお母さんだけでなく、キャリアを持ち自立しているお母さんが求められることもある」ということです。
今は大変かもしれませんが、少し先の未来を見据えて頑張ってほしいと思います。

定年後の選択肢

定年を迎える少し前に、上司との面談や説明会があり、以下の選択肢が提示されました:

  1. 今とまったく同じ条件での継続雇用

  2. 出勤日数や勤務時間を減らす時短勤務での継続雇用

  3. アルバイト雇用

  4. 定年退職

多くの方が高齢者になっても仕事を続ける昨今、私も完全に退職するつもりはありませんでしたが、もう少し自分の時間が欲しいとも思っていました。
会社の仕事が休みの日にしか行えない料理教室の予約も入っていたので、「会社勤めを減らせばレッスン日を増やせる」と考えるようにもなりました。

ただ、料理教室の収入は不安定で、今より収入は減ることが予想されたため、選択肢の「2. 時短勤務での継続雇用」と「3. アルバイト雇用」のどちらにするかで迷いました。
しかし、3のアルバイト雇用では、同じ仕事をしても時給換算の給与が減り、ボーナスや有給もなく、さらに福利厚生面も大きく変わります。

一方、2の時短勤務ならば社員としての雇用が続き、年間の休日数が増えるため、料理教室の日数も増やせそうです。
しかし、細かく調べた結果、有給が減るために年間で休める日数は今と数日しか変わらないことがわかり、最終的には「もう少し頑張って今までと同じ条件で働こう」と決心しました。

私の考えを変えた先輩の言葉

定年後も働くと決めると「こんな年寄りを今まで通り雇っていただけるなんてありがたい」という気持ちが芽生えてきました。
数年前に雇用制度が変更され、以前と変わらない給与で働けるようになりましたが、少し上の代の先輩方は60歳以降に減給されたので、その点でもありがたみを実感しました。

定年前には、雇用制度の説明会だけでなく、個別のキャリア相談も行われました。
相談員として対応してくださったのは、7歳年上の先輩。
別の部署にいらっしゃる方なので、親しくお話ししたことはありませんでしたが、会社の英語研修で何度かご一緒したことがあり、顔見知りでした。
いつも穏やかでにこやかな、素敵な紳士です。

お話をする中で知ったのですが、その先輩はキャリアコンサルタントの資格もお持ちで、定年後の仕事を見据えて50代後半で取得されたとのこと。
実際、フリーランスのコンサルタントとして十分な収入を得るのは難しく、現在も会社に残って仕事を続けていらっしゃるとのことですが、社員向けのキャリア相談を担当することで、その資格が無駄になることはなかったようです。
私も50代後半から定年退職を視野に入れて、食に関連するいくつかの資格を取得し、多少なりとも役立っています。
しかし、十分な収入を得るには会社勤め以上の努力と時間が必要で、保証がないことも実感しています。

先輩と私には「お金のために会社勤めを続ける」という共通点がありましたが、心の持ち方には大きな違いがありました。
私の場合、「好きな仕事というわけではないけれど、お金は必要。だから決められた時間に決められたことをなんとかこなせばいい。プライベートな時間にやりたいことに打ち込むためにも体力を温存しながら働かねば」と考えていました。
しかし、先輩の考え方はまったく違いました。
「定年後も仕事を続ける私たちは、元気に楽しそうに働く姿を若い人たちに見せるべきだと思うんですよね。」
その言葉を聞いたとき、自分の考え方が自己中心的だったと気づき、少し恥ずかしくなりました。

定年後の自分が若い人たちに見せる姿

私が若い頃は60歳定年が当たり前だったので、還暦以降は趣味を楽しんだり、友人と旅行したりして悠々自適に過ごすつもりでした。
しかし、今の自分は当時描いていた未来とは異なる生活を送っており、どこかで自分を哀れんだり、励ましたりして、とにかく意識が自分にしか向いていなかったのです。
それに対して先輩は、次世代の若い人たちに「いつまでも元気に働けるんだ!」という希望を与えるべきだと考えていらしたのです。

その言葉を聞いて私の考え方が変わりました。
日頃から次世代のために持続可能な未来に向けてできることを意識して、ゴミの分別やフードロス削減には気をつけている方だと自負していましたが、身近にいる若い人たちの希望を奪ってしまっては、次世代の方々の役に立てない。
若い世代に明るい未来を見てほしいと思うようになりました。

それ以来、できるだけ元気に働くよう心がけています。
疲れたとか、腰が痛いなどの愚痴も言わないように気をつけています。
気持ちが前向きになると頭もすっきりしてきたように感じます。
どんどん変わるシステムや運用の変化にも以前より柔軟に対応できるようになりました。
「もう年だから疲れるのよ」「覚えられないのよ」なんて思っていると、余計に疲れ、覚えが悪くなるという悪循環から脱却できた気がします。

それでも、やはり体が思うようにいかない日もありますが、この気持ちを忘れずに、『年寄りの冷や水』を楽しみながら働いていきたいと思います。

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