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“韓流サードウェーブ”はどう発展するか アジアトレンドを追うべき理由
インターネットやテクノロジーの発展で、エンターテイメントコンテンツはボーダーレスなものになった。以前は渋谷や原宿といった街や雑誌からトレンドが生まれていたが、次第にブログサービス、SNSへと、トレンドを生み出す“場所”は時代と共に変わっている。
この流れに伴い、かつて「ギャル系」と呼ばれたカテゴリーの若者が、今や韓国カルチャーを取り入れた「韓国系」に代わった。そして今では韓国のみならず、中国をはじめとしたアジアのトレンドを追いかける若者まで出始めている。
これまで雑誌やブログといったテキストベースでしか得られなかった情報が、非言語コミュニケーションが可能なインスタグラム(Instagram)などのSNSで得られるようになったことが大きな要因だ。
しかし、なぜアジアは彼女たちを引き付けるのだろうか。
■ガールクラッシュな女性像 自立するミレニアルズたち
今、韓国は多くの若者を引き付けている。日本だけでなく世界中といっても過言ではない。アメリカのコスメ専門店「セフォラ(Sephora)」にはコリアンコスメの棚があり、世界最大の美容企業ロレアル(L'Oreal)は韓国コスメ「3CE」を擁する「スタイルナンダ(Stylenanda)」を買収した。また東南アジアでも韓国コスメブランドが多数進出している。これまでは韓国の「キャッチ―さ」がこの人気をけん引していた。
今年のコーチェラ・ミュージック・フェスティバル(世界最大級の野外フェス)で、初めて韓国人アーティストが登場した。それはこれまで注目されてきたBTS(防弾少年団)ではなく、女性アーティストのBLACKPINKだった。
彼女達の特徴は、かわいさであったり、美脚であったり、という今までの“韓国アイドル”のイメージとは少し異なる(もちろん、どちらの要素も兼ね備えてはいるが)。端的に言えば「強く、自立している」女性像なのだ。彼女たちは“ガールクラッシュ”と形容されている。衣装はハイブランドが多く、メイクもヘアスタイルも男性受けというよりは女性受け、もっといえば「自分受け」なのだ。
こういったアイドルが出てきたのにも背景はある。世界的に女性が自立し、フェミニズム運動なども盛んになった。韓国でもフェミニズムの運動は盛んで、日本とはかなり温度感にも差が出てきている。日本のミレニアルズは自身をフェミニストとは言わずとも、こういった女性像を「スカっとする」「とても共感できる」と憧れの対象にしているのだ。
元をたどれば、安室奈美恵や浜崎あゆみも男性に媚びるようなスタンスではなく、等身大の自分や女性の気持ちを歌い、自分の好きな服を着ていた。それに影響されたのが「ギャル系」だったことを考えれば、ガールクラッシュグループに影響される「韓国系」は理解できるだろう。
■なぜアジアなのか 中国「チャイボーグ」が脚光を浴びる理由
そういった「韓国系」の彼女たちが韓国のみならず、アジアに目を向けるのはなぜだろうか。
最近は中国の美女(中華美女)がじわじわと人気を広げている。中華美女の、まるでCGのように完璧で美しいさまを「チャイボーグ」(チャイナとサイボーグからきていると思われる造語)と呼び、その姿に憧れる若者が増えている。
「韓国系」の多くは韓国アイドルグループ・プリスティン(PRISTIN、現在は解散)に属していた中国人メンバーのギョルギョンや、元SNH48メンバーのジュー・ジンイー(キクちゃん)などから中華美人に惹かれ、今やお気に入りのワンホン(KOL、中国のインフルエンサーのこと)がいる人も少なくない。
(写真:中国ソーシャルECアプリ「小紅書(RED)」で人気のワンホン達)
そして、そんなチャイボーグたちのスタイルの多くはフェミニンというより、むしろ強く、凛々しい美しさだ。そしてワンホンたちは自分の努力を隠さない、整形までも公開するほうが共感し、支持されるからだ。まさに今の潮流にあった理想像といえる。
ツイッターで12万フォロワーを抱える「紅美女」(@hongmeinu_china)は日本語で中国のトレンドを発信しており、主に美女とそのメイク、ボディーメイク方法がコンテンツで、ECサイトも運営している。こういったメディアから情報を得て、実際に中国コスメやアパレルを購入する日本人も増えている。
こういった中国好きだけでなく、東南アジアなどもそのうち人気が出てくるだろう。前述のBLACKPINKの一番人気メンバーLISAはタイ出身で、東南アジアでも人気だが、日本でもその人気は高い。
■それでも終わらない韓国人気のなぜ
中国やアジアは注目トレンドではあるが、その影響で韓国の人気が終わるということではない。韓国はブームではなく、すでにひとつのカテゴリーとなっている。これまでは韓国ブーム=韓国ドラマ、美女のアイドル、など一過性になるコンテンツが多かったが、サードウェーブ以降はさまざまなジャンルが“韓国カテゴリー”の中で生まれているからだ。
以前流行った、かわいらしいイメージの“オルチャン”スタイルや、ユニセックスな発信で男女ともに受け入れられた韓国ストリートファッション、さらにカフェ好きな人たちが好むようなシンプルでカジュアルなスタイルなど、カテゴリーとしての“韓国”には幅広い選択肢がある。
(↑日本人に人気の韓国ブランド「depound」は日本上陸前からファンが多かった。そのスタイルもこれまでの「韓国らしさ」とは少し異なった印象だ
また韓国は他の国にくらべて情報獲得、また旅行先としてのハードルも低く、文化的にも近い。姿格好も近く、参考としての憧れはどの国よりも得られやすい。
だからこそ、ニッチな一部の層はよりめずらしいアジアの情報を得ようとし、その一方で韓国は多くの人に受け入れられている。そしてこの流れは日本に限らず、やはりボーダーレスに広がっていく可能性を秘めている。