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【本当の幸せに気付かされるヒューマンドラマ】『PERFECT DAYS』(パーフェクト・デイズ)
久しぶりに心に響いた映画を観た。20代の頃だったら、この作品の良さは分からなかったと思う。
銃をバンバン撃ったり、爆発したり。
激しい映画が好きだった時代にこの映画を観たら、「何が言いたいの?」と思ってしまっていただろう。
「生きる」とは、基本的には毎日の繰り返しであり、
刺激的なことなんて、人生で頻繁に起こるものではない。
ほぼすべての人が夜に寝て、朝起きて、仕事するというのを繰り返すのが一般的なのではないだろうか。
若い頃は、刺激的で非日常なことが楽しくて、何か起こった方が幸せなんだと思っていたけれど、”毎日の繰り返しの中に幸せがある”ということに気が付いたとき、
この作品が「わかる~」と共感に変わり、この主人公の平山さんはこんなことが好きで、それが彼にとっての幸せなんだと。
彼の言ったセリフで、「人生には一日も同じ日はない」というものがあった。
毎日同じことを繰り返しているようであっても、何か違うことが必ず起こっていて、まったく同じではない。
平凡に過ごしていても、突然人が訪ねてきたり、面倒な出来事に巻き込まれてしまうこともある。
まったく同じ日を繰り返すなんてことはないのだから、「つまらない」と思ってしまったら、昨日と違うことを思い出してみよう。
花を飾ったとか、そんな小さなことでも変化があったのなら、その変化を存分に楽しもうと、そんなことを考えたとき。
何気ない小さなワクワクみたいなものに、幸せを感じることができる。そんなことを思った作品。
さらにこの映画の印象を強めたのは音楽ですね。
主人公である平山がトイレ掃除の仕事に向かうときに流す音楽、アニマルズのThe House of the Rising Sun(朝日のあたる家)が彼をかっこいい印象にさせています。
【使われている音楽】
ローリング・ストーンズ「めざめぬ街」((Walkin' Thru The) Sleepy City)
ヴィム・ヴェンダース監督が選んだ音楽ということで、トイレ掃除という地味な映画に思ってしまいますが、どこかおしゃれでアーティステックな印象があります。
この音楽と映像の雰囲気が別の世界に連れて行ってくれるような、疲れたときや癒されたいときに、また観たくなるだろうなと。そんなことを感じてしまいました。