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写真のお仕事の話。広告の仕事⑤
かつてこんなに悲壮感にあふれた仕事はあっただろうか。
むかしまだアシスタントだった頃、とあるバイクメーカーのカタログ撮影の現場に、ほとんどレギュラーみたいな感じで入っていました。
平均するとだいたい2週間ぐらい。ちょっと地方にあるスタジオにほぼこもりっきりで永遠にバイクを撮っていたあの頃。
個人的には大変だったけど、それほどイヤな現場ではなかったので、毎回行くのは楽しみだった記憶があります。
現場ではひたすらバイクを磨き、ホリゾントを塗り、暗い中でストロボ発光を見続けて目がチカチカしたり、先輩達と一緒に遊んだりなんかしてわりと楽しく仕事してましたね!
事件が起きたのは、とある日のこと。
朝、スタジオに出社してモーニングコーヒーをズズーッと楽しんでいたスタッフ一同。新聞読んだり雑誌読んだりしながらゆったりとした時間を過ごします。
当時はフィルム撮影ですから、前日に撮ったテスト写真の現像を待って仕上がりを確認してから本番に行くのが常だったので、現像屋さんからフィルムを持ち帰ってくるまで現場は待機状態。
そして新しく撮るバイクの新機種も、今日トラックに積み込まれてやってくる段取りなので、どっちにしてもそれがこないとやることがありません。
テスト現像が仕上がってきてカメラマンさんが確認した後、本番撮影。
ささっと終わって、次の撮影の準備をします。
そしてお昼ご飯を食べにみんなで出かけて、さあお昼からまた頑張ろうかとみんな気合十分!
食後のコーヒーを飲みながら、トラックが到着するのを待ちます。
1時間後。
予定より遅れてますねー。混んでるんですかねー。
2時間後。
ん-、だいぶかかってますね。今日くるんですよね?
3時間後。
あれ?さすがに遅くないですか?
さすがにこの時間になってもやってこないのはおかしい。
カメラマンさんは関係各所へ確認の電話をします。
スタッフはやることがないのでひたすら待機。当時はスマホなんてありませんから、やることが本当にないんです。スタジオの掃除したり機材のメンテしたり、ついには段ボールでわけのわからないものを作る始末。
そして待つこと数時間。
衝撃の事実が判明します。
今日撮るはずだったバイク達。
間違えて、海外に行ってしまいました…!!
ええええええーー??!!どういうこと??!
どうやら撮影用と出荷用と間違えて、そのままコンテナに載せられて海外行きの船に乗っちゃったらしいです。。。
そんなことある?!?!
これにはカメラマンさんも苦笑いするしかありません。
まあ撮影するものが海外に行っちゃったので、当然やることはない。
てことで、本日の撮影は終了ー!てかこのシリーズの撮影しゅうりょー!
残り数日間のスケジュールもぜーんぶバラシ。
だって撮るものがないんだもの!
なかなか珍しい経験をしました。
後日、撮るはずだったバイクが戻ってきたのか、新たに用意したのかは知りませんが、無事撮影できましたとさ。