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神ノ子
「こんなゴミみたいな仕事を私にさせるな」
結構本気でこう言うことを考える。私にしかできない仕事がもっとたくさんある。私だからできることをやらせてくれ。私だからできるし、私にしかできないと思ったから、あなたたちは私を雇用したのではないのか、と。
仕事もヒトも人生も、なんでも簡単なものはない。蓋を開けてみると、往々にして、魅力的に思えた内容は「こんなはずじゃなかったのに」と私の頭を悩ませる。これは明らかに、私がすることではないだろうと。
だが、私はこれも知っている。
それは確かに、私に仕事を振ったお前がすることでもない。
ということを。
そして会社の中の誰一人として、それを十分に実行する素養や忍耐を備えておらず、あきらかに消去法としては、現状、私が適任であることを。
そんなときに、心の中の私が叫ぶ。私は神ノ子なのだと。いやそれは言いすぎたが、少なくとも私には明確なやりたいことがある。
興味だって人一倍で、あれだってこれだってやりたいのだ。才能だってある。そりゃあテレビでお見受けするような何百人に一人の才能はない。だがちょっと教えて貰えば、相手もびっくりするくらいには頑張るし、成長するのだ。
だからこんなゴミみたいな仕事を私に関わらせるな。目の前にも出すな。お前がそれを私に少しでも強要するということは、社会にとってとんでもない希望を少しずつ奪っていることと変わりないのだと。
こんなもののために私は生まれてきたわけではないのだ。お前だってそうだろう。お前だってどこかそらの神ノ子なのだろう。この気持ちがわかるのではないか。なのになぜまだこのゴミを私の前に向けるのだ。たとえこれが終わったとして、よく終わっても、悪く終わっても、お前の人生にも、私の人生にも何の価値もないだろう。
残るのは疲弊と後悔と嫉妬だ。
ゴミに自分の命をすり減らした、精神と体力の疲弊
こんなはずじゃなかったという後悔
そしてこんなゴミみたいなものに見向きもせず、今日も前に足を進め強くなっていく戦士たち。
そうだろう。わかってくれるだろう。
ありがとう。そうだよ、君ならきっとわかってくれると思っていた。
ん?でもどうしようもないって?
そうだよな。君がそういうと、私もはるかいにしえの昔にわかっていたよ。
全部冗談だからさ、さっさと一緒に仕事に取り掛かろうぜ。