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『おかえりモネ』第21~23週「大人たちの決意」まで

震災で妻を亡くし船もなくして、漁師をやめアルコール依存症にもなっていた新次がたどり着いた答え、「元に戻ることだけが正しいとは思えない」。このドラマがもっとも伝えたいことのひとつなんでしょう。

「元に戻ろうとしたら、動けない。止まってしまう。だって、どんなにがんばっても元に戻すことはできないから」 
だから、新次にとって前を向く方法は海に戻るのではなく、陸で生きることだった。

浅野忠信に負けてないくらい永瀬廉くんの芝居もすごくて、激昂したかと思えば急に頼りなげな子どものような表情になる。

「俺にとっては親父を元に戻すのが人生の目的だった」
との言葉に涙が止まらなかった。
15歳から24歳までの亮の9年間…

前日も、新次がふと虚ろな表情になったとき、すぐさま察して「親父、だいじょうぶ?」と言った亮。
こんなふうに、不安になったり嫌悪したりしながら、ずっとずっと父親を心配してケアしてきたんだなあと思うと泣けた。9年だよ。

息子の乗る船が嵐に揉まれたとき、「亮を連れて行かないでくれ」と妻に祈っていた、それは、自分が妻は向こう(=彼岸)にいると思っている証拠だったんだと言う新次。

(この日、ガラケーをもった新次の手元をアップにしたカットの意味が翌日のシーンでわかった。こういうところが「おかえりモネ」の好きなとこで、人によってはわかりにくいと感じるところなんだろう)

彼が妻の死を認めるまでに9年かかった。
それは必要な時間だったんだと思う。
でも、母を亡くし、壊れてゆく父を見ながらどうしようもなく、必死に踏ん張ってきた亮のことを思うと、なんて長い時間だっただろう。

亮が言うとおり、何もかもを失くしたわけじゃない。
若い頃は誰でも葛藤するし、亮は立派な漁師に近づいている。
でも、彼の15歳からの9年間を思うとあまりに切ない。

死亡届に判を押すまでのタメの長さ。
心の中で認めていても、社会的な手続きを踏むのは、また違うんだよね。
そして人は社会的な手続きをしなければならない。
人は社会で生きていかなければならないから‥‥。

社会的には「妻の死がお金に代わる」わけで、
それを正面から描くのもこのドラマらしい。

長いドラマの最終盤まで引っ張ってきた新次と亮の父子の物語は
「人はレジリエンス(回復)できる」
という希望にたどりついたけど、

「失ったものは決して取り戻せない」
「レジリエンスまでの過程がどんなに苦しいか」

もしっかり描かれ、最後まで苦さも残したと思われ
それがこの物語の誠実さだなと思う私です。

永瀬廉くんは、モネに言われて
「お前に何がわかるんだよ、と俺以外のみんなに思ってた」
のくだりの芝居もすごかった‥‥
ジャニーズの「ナガセ」姓は演技がうまいという法則でもあるの?
って思うくらい。


新次と亮のくだりで、耕治(内野聖陽)が妙にエラそうというか、上からな趣だったのが気になっていたら、翌日は耕治のターンだった。

銀行員として、震災で家族や家や仕事を失くした人とたくさん向き合ってきた。お金の話をしながら、ずっと「お金だけじゃない」と感じてきたと言う。

「親父はかっこいい」
「家業をどうせたたむなら俺にくれ」
陸しか歩いたことのない50代半ばの銀行員の挑戦。

まっすぐでポジティブなのが取り柄の耕治。
でも、実は彼もずっと屈折を抱えていて、
すごく遠回りをして、この日に至った。

耕治を決意させ、解放したのは、
これまでずっと苦しんできて、まわりに心配させ迷惑もかけ
耕治がずっと面倒を見てきた新次であり
その息子の亮でもあった。

それは亜哉子(鈴木京香)のターンも同じで、
彼女が地の底から響いてくるような恐ろしい声で
震災の日のことを語り始めたとき本当に胸を衝かれた。

明るくて優しくて賢いお母さんが抱えていた痛み。
母でもある女性が仕事で味わった苦しみ、ひとりでずっと抱えていた傷が、9年経ってついに語られた。

それを促したのは間接的にはモネだけど、
直接的には、あのとき1年生だった小さな教え子だ。
あのとき小さかった子が、亜哉子さんの心にずっとかかっていた重石を下ろしてくれた。
それができたのはモネがあの子に「何でも言って」と寄り添ってたからでもあり、母の言葉を受け止められる大人に成長していたからでもある。

小さかったあの子も、妻を失って荒んでいった男も、
ただ弱いだけの存在ではない。
あのとき同じ経験をしなかったモネだから引き出せた言葉もある。

すべてが循環してる。
いよいよ来週が最終回、今は2020年1月末。

なんとなく、コロナを匂わせるくらいな感じで終わるのかな?と。
いわゆる「俺たちの戦いはこれからだ!」エンドというか。
次の「カムカムエブリバデ」は藤本有紀脚本でこちらも楽しみだけど
すでにモネロスの気配が~😭

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