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能傍タルツの実話怪談コレクション 「現代筑前奇談考」 その三十七 -12月-   『ケサランパサラン?』


 筆者の投稿を読んで下さる
 読者のみなさんなら
 ケサランパサランをご存知だろう。

 かなり有名な存在なので
 詳しい説明は省くが
 動物性、植物性と
 あるとは聞くのだが
 まあ、いわゆる綿毛の塊のような
 生物とも菌類ともなんともつかぬもの。
 捕らえたら箱の中に入れて
 白粉を餌にして飼育すると
 増えるなどと言う。

 筆者の知り合いで
 不思議博物館サナトリウムという
 コンセプトカフェで
 時折手伝いをしている
 しのちゃんという女性がいる。

 彼女は九州の
 ちょうど真ん中あたりに位置する
 大分県日田市の出身だ。

 そこは今で言うところの
 限界集落であり
 通っていた小学校にも
 三十年前くらいで全国生徒は
 十二人くらい。

 どの家も全て
 古民家のような家屋だったらしいから
 現在はいかほどであるか
 想像に難くない。

 それでも
 村の中心地あたりには
 4軒ほど小売店があったりするのだが
 その中の1軒
 タバコ屋の娘さんである同級生、
 仮にA子ちゃんとする。

 彼女がある日、
 家の中に
 不思議な動物がいたから捕まえたと
 なにやら小箱に入ったものを
 学校に持ってきた。

 見るとその中には
 たんぽぽの綿毛に
 マッチ棒のような細い足が
 二本生え
 すばしっこく動き回る
 虫とも植物とも言いようのない
 物体が入っていた。

 A子ちゃん曰く
 床の上にいたから
 箱をカポッと被せて
 捕まえたとのこと。

 それおば
 教室に持ち込み
 みんなが興味津々で見守るなか
 そっと箱から出してみると
 綿毛から飛び出した
 そのマッチ棒のような足を
 交互に激しく動かし
 昆虫そのものの動きで
 あちこち走り回るさまを
 全学年で十二人の生徒はみな 
 目撃したらしい。

 そのうちの誰かに
 知識があったのか
 これはケサランパサランだよと
 言うのを聞いて
 しのちゃんは
 へえーっ!そうなんだ!
 おしゃれでかっこいい名前だ〜!
 と、子ども心に思った。
 
 ところが
 走り回るうちに 
 その細い足がグキッとなり
 それっきり動かなくなったので
 飼い主のA子ちゃんは
 再びそれを
 箱に戻して持ち帰ったそうだ。
 
 数日たって
 A子ちゃんに
 しのちゃんが聞いてみると
 どうもその事故?が元で
 その生物は死んでしまったから
 庭に捨てたそうだ。

 筆者が先週
 不思議博物館サナトリウムの
 しのちゃんに
 教えてもらった
 子どもの時の
 忘れられない記憶のはなしである。

 ところで。

 これって
 ほんとにケサランパサランか?

 そう考えるのは
 筆者だけであろうか?

 ❨終わり❩


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