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能傍タルツの実話怪談コレクション 「現代筑前奇談考」 その三十六 -11月- 『下宿にて』 “PUNKSの語る実話怪談” 山形県在住 I氏から聞いた話
筆者の若いPUNKS仲間である
Iくんだが、絵を描く事を生業にしており
現在、故郷の福岡を遠く離れ
山形県に在住している。
彼が5年ぶりに帰福した際
設けさせていただいた
酒席で聞かされた話。
彼が学生時代だから
もう十年以上は昔の話であろうか。
彼の地で一番初めにできた
友人S平氏は
PUNKSであるが
同時にそば打ちの修行もしていた。
そして夜は実家にて
ご両親と共に経営する
学生専用の下宿の
世話人もしていた。
いわゆる
家族が住む部屋の階下などを
間貸しし、
朝晩2食つき、トイレ風呂は共同
といった体の
今どきはあまり流行らない
いわば学生寮みたいなものだ。
男子学生のみではあるが
それでも手頃な家賃と
気安さがあってか
何人かの学生さんが住まいしていた。
ある夜更け。
バン!バン!バン!バン!バン!バン!
玄関の戸を
けたたましく
何度も叩きつける音で
S平氏の一家は目覚めた。
恐る恐る
両親が戸を開けると
ざんばら髪で裸足の
少女がずぶ濡れで立っていた。
むろん
ここの住人ではない。
しかも
ご両親が何をたずねても
何か激しいショックを受けたのか
あるいはなんらかの
心因性の障害があったのか
全くと言っていいほど
何も喋らず何も答えず
やむなくご両親は警察に電話して
引き取りに来てもらった。
しかしながら
警察署でも全く同じ反応であり
また、携帯電話、財布はもちろん
身元を証明するものは一切持ち合わせて
いない為
途方に暮れた警官たちは
最終的にはしかるべき
福祉、医療機関に
任せたのではないかという話であった。
筆者が思うに
彼女はおそらく
なんらかの形で
半強制的に
監禁されていた場所から
裸足で逃亡してきたのだろう。
宗教的団体か
それを模した集団等により
ある家族がまるごと洗脳され
支配者の命ずるままに
虐待を受けていたり
家族同士で殺しあっていた
おぞましいケースは過去にある。
いわゆる
「北九州監禁洗脳殺人事件」がそうだし
それをモチーフにした
『闇金ウシジマくん』”洗脳くん“
という漫画作品をご存知の方もおろう。
しかし
解せないのが一点。
あの夜
少女が話した言葉は
ただの一言。
「この建物って誰か死んでませんか?」
だったらしい。
実際にその下宿で
死人が出たかどうかはさだかではなく
また
山形県で監禁殺人事件があったかどうかも
闇の中である。
いずれにせよ
どうにも意味不明にして
あと味の悪い
話しであったようだ。
❨終わり❩