全き世界
私の世界はグラス一杯の水と、その水を冷やす冷蔵庫、そうしてあとは一枚の鏡で全てだった。
全き世界にはそれ以外の何ものも必要なく、私は毎日、水のなみなみ入ったグラスと鏡、そしてその両方に写った自分とを眺めて暮らす。
満足している。
冷えた水を飲み、自身の姿を見つめ続けるだけのこの生活に。
だが今日も、この全き世界に一人の少年がやって来る。
「やあ、今日も水を買ってきたんだ。ところで、たまにはケーキでもどうかな?」
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