緊急特別企画:君はステキなことはステキだと無邪気に笑えるか?
――今号から『CONTINUE』はリニューアルしましたけど、まったく変わってなくないですか?
編集長・林(以下、林) 変わってないと思いますよ。編集長は僕だし、大橋(一毅)さんがデザイナーですから。でも、マインド的には相当変わってると思うんですけどね。
――それは、どのあたりですかね?
林 登場してる人が若い(笑)。表紙のファイルーズあいさん、音羽-otoha-さん、『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』のJUN INAGAWAさん……みんな20代で、テーマは一貫して「好きなものは好きと言おう」ですからね。メンバーが揃いも揃って若くなってるのは、雑誌の若返りという意味でも、すごく良いんではないかな、と思います。
林 (ここで唐突に)あの、村上龍の『トパーズ』って本、読んだことありますか?
――ないですけど、村上龍がSMにハマってた頃の短編集ですよね。
林 そうそう。全編どこを読んでもヘンタイしか出てこないんですけど(笑)、その中に「サムデイ」っていう短編があるんですよ。
――「サムデイ」って、あの「サムデイ」ですか? 佐野元春の?
林 その「サムデイ」。ヒロインは女子高生なんですけど、知り合った男――性的倒錯者のヘンタイで人間性も最悪のヤツ――がラスト、彼女に向かって「君を見てると昔好きだった歌を思い出すけどね」「とてもいい歌なんだよ」って言うんですよ。それが「ステキなことはステキだと無邪気に笑える心がスキさ」っていう……。
――有名な一節ですね、「サムデイ」の。
林 でも、それってレトリックとしては二重に捻くれてて、まず、基本的に「ステキなことはステキだと無邪気に笑える心がスキさ」っていう言葉の持つストレートにベタな、胡散臭い感じを明らかに村上龍はわかってて、それを、そのヘンタイに言わせてるんですよね。それは元ネタである佐野元春にしても同じで、言っちゃうと、いい年した大人が「ステキなことはステキだと無邪気に笑える心がスキさ」って本気で信じてたら、そいつはバカですからね。
――バカは言いすぎでは(苦笑)。
林 いや、バカです(断言)。でも大切なのは「ステキなことはステキだと無邪気に笑える心がスキさ」に向けられた「お前、何ガキみたいなこと言ってんだ?」っていう冷笑的なスタンスに対して、もう一度だけ、あきめないで、そういったエモーションを信じてみよう――っていうのが「サムデイ」という作品の本質だと思うんですね。
林 だから、そういう「好きなものは好きと言おう」「ステキなことはステキだと無邪気に笑える心がスキさ」っていう初期衝動を取り戻すことが、今回のリニューアル最大のテーマなんじゃないかな、って気はしてるんですよね。「奪われたものは取り返さなければ」という。
林 ホント、わかりやすいリニューアルだと思いますよ。だって、僕、ファイルーズさんのグラビアに村上龍の「サムデイ」を引用して載せようと思ってましたからね。
――あははは、「君を見てると昔好きだった歌を思い出すけどね」「とてもいい歌なんだよ」って?(笑)
林 そうそう。さすがに「それは気持ち悪すぎだろ」と思って、やめましたけど(苦笑)。でも、まあ、そういうマインドで、あと少しだけ『CONTINUE』を続けてみようかな、と思ってますけどね。
(『CONTINUE』Vol.82より/取材・文=編集長・林)