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知らなくていいこと

マックで500円のスパチキを頬張る。

お金がない。3ヶ月もバイトをしてないと口座から5万円、いや7万円なくなってた。

手持ちのお年玉ももう尽きる。

とにかく、お金がない。

だから、お昼ご飯は500円以下にしようと決めた。

マックのセットで内容的にも許容できるもので500円以下なのは、スパチキのみだった。

ここから数ヶ月はスパチキばかり食べているだろう。

話を戻そう。

店内でスパチキを食べていると、目の前のカウンター席に座って友人らしき人と話している女性の背中に蝿が止まった。

つい、目で追ってしまう。

自分のところに来たらすぐ逃げられるようにするためと、一度気になったら気になり続けるクチだからだ。

そしてこの蝿はなかなかしぶとく、数十秒経っても飛び立たない。

しかし女性は一向に気づかない。

それもそうだ、友人とおしゃべりしている時に、自分の背中なんて意識にあるはずがない。

その時、もしこの女性が自分だったら、と思った。

蝿に気づかない方が、嫌な思いをせずに済む。

でも、自分の知らないところで自分に蝿が止まっていたら、不気味ではないか?

おそらく、100人いたら90人が、「そんなこと知らなくていい」と思うだろう。

だがどうしても、知らなくていいけど、知っていたい、自分の知らないところで自分の不快になりうることをされていることを知っていたい、という思いも浮かぶのだ。

そんなことを考えているうちに蝿はすっかりいなくなり、、なんてことはなく、隣の女性の背中へ、次はひと席離れた男性の元へと飛んでいく。

そんな光景ももうすぐ目にしなくなるだろう。

虫たちも鳴りを潜め始める、もう立派な秋なのである。

来年には昼食500円生活を辞められるといいな。

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