自分が最高にいいと思うなら。
リモートワーク15日目。
「自分が最高にいいと思うなら、いいよ」
会社のメンバーに僕がよく使う言葉だ。
リサーチ、企画、原稿、デザイン、どんな仕事でもそうなのだけど(もちろんお弁当の手配だって!)、「自分自身のアウトプット」を自信を持って誰かにプレゼンテーションできるかどうかは、こういう仕事をする上でとても大切なことだと思う。
考えてみればあたり前のことで、例えば僕が家を建てる時、「うちの代表もそう言っていたし、これで大丈夫なんじゃないかと思います」「このデザイン、最近カリフォルニアで流行してるんです」なんていう「自分の言葉で話さない」設計士には、絶対大切なお金を預けたくない、と思う。
それなら、自分のアウトプットを、心の底から「いい」と思えるようなものにするためには、どうしたらいいのか。それには2つのコツがある。
まずは、相手のニーズを徹底的にヒアリングする、ということ。ゼロから自分の責任で新しい作品を生み出すアーティストとは違って、僕らの仕事にはたいてい依頼主(クライアント)がいる。なので、アウトプットの精度をあげるためには「達成すべき目的」、つまり「依頼主の本当の気持ち」をできる限り細かくヒアリングすることが大切になってくる。仕事ができる人は、自分からインタビューする力、つまり「能動的なコミュニケーション力」が高い。
もうひとつが、「あきらめないで考え抜く」こと。与えられた課題を解決するための方法を、資料を読み込み、リサーチを繰り返し、自分がいまできる能力を最大限使い切って、あらゆるパターンを試してみる。もちろん締め切りまでの限られた時間内で。そうして「考え抜いた」アウトプットには、おのずとその人自身の熱量が宿るものだ。
僕たちはつい「感度の高いものを提案する」のが自分たちの仕事だと考えてしまうものだ。だから自分より感度が高そうな人(例えば身近なところで言えば上司)を前にすると、自分のアウトプットに対して、つい自信なさそうな言い訳をしてしまう。
けれど、僕たちのような課題解決の仕事をする人間にとって「センスがいい」というのはつまり、「相手の気持ちを理解する」と「あきらめずに考え抜く」ということ。逆に言えばそれさえできれば、能力や立場にかかわらず、仕事に関わるすべての人が「その立場においての最高にセンスのいいアウトプット」を提案できるはず。
洋服を買いに行ったときに「一流のモードブランドも取り入れているデザインですので」「あの雑誌でも取り上げている商品です」みたいな言葉を聞いたら気をつけよう。その人はきっと、僕たち自身のことをほとんど見ていないし、なにより自分の言葉で話していない。
相手をきちんと知り、自分自身で思考し、自分の言葉で提案する。それが自分のアウトプットに「最高にいい」と自信を持つための「コツ」のようなものだと思う。