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南米の腐女子事情とBL市場
南米におけるBL(ボーイズラブ)コミックス市場は、急速な成長を遂げており、特にデジタル配信プラットフォームがその普及を後押ししています。南米でも腐女子の存在感は日に日に増していると言えます。
ブラジルやアルゼンチンを中心に、南米のBLコミックス市場について掘り下げていきます。
南米圏での腐女子達の社会的背景
・南米のLGBTQ事情
: 南米は性にオープンで、LGBTQに対しても寛容なイメージがありますよね?しかし、実際はキリスト教圏でもあり保守的な人も多い為しっかりと差別が存在しています。ゲイであることを公表すれば、家族から阻害されたりもします。また、集団リンチの対象にもなりやすく、日本の差別と違いやや過激です。一方でゲイパレードや啓蒙活動なども盛んです。そのため、最近では保守的な層も大分軟化してきたと言われています。(それでも、大統領によって社会情勢がガラッと変わったりします。)
そんな社会背景もあり、BLはゲイ向けのコンテンツと同一視されがちでしたが、2010年頃から「腐女子」が認知されるようになってきました。
・女性解放運動とBLやGLが繋がっちゃう世界線
:南米は、女性運動や社会格差の問題において複雑な状況を抱える地域です。多くの国で歴史的な背景や社会的な構造が、ジェンダー不平等や社会的格差を助長していますが、同時にこれらの問題に立ち向かう女性運動が力強く展開されています。ブラジルではBLイベントでフェミニスト活動や性差別に関する啓蒙活動の一環として講演会なども開催されるようになってきています。これまではLGBTQの人だけが参加するような講演に、イベントを通して一般女性(腐女子)も参加するようになり、性差別に関する意識の広がりが生まれているという話も聞きます。
BLやGL作品を読むことが、「趣味」の範囲を超えて社会運動につながるのも、南米ならではかもしれません。
デジタル時代のBL市場
デジタル配信の急成長により、南米では多くのBL作品が広く読まれるようになりました。特に韓国や日本の作品が人気を博していますが、現地の作家によるオリジナル作品も徐々に市場での存在感を増しています。
ブラジル
デジタルプラットフォーム「Tapas」では、BL作品が月間約15万ドルの売上を記録。
韓国BLウェブトゥーン「Semantic Error(セマンティックエラー)」は、月間購読者数が約20万人に達し、その人気が際立っています。
日本のBLコミックス「ギヴン」は年間売上約5万部を記録しており、安定したファン層を確保しています。
Anime FriendsもTVアニメ版ギヴンの主題歌を担当したアーティストを招聘してライブがものすごく盛り上がっていました。
アルゼンチン
BL専門出版社「Editorial Hispana」は年間約30万ドルの売上を達成。また、デジタル配信プラットフォームでは、BL作品が全体の約15%のシェアを占めています。元々アルゼンチンは早い時期から日本の翻訳コミックスを出版していたこともあり、比較的日本のBLが優位です。
ただ、デジタルプラットフォームによるウェブコンテンツも増えてきたことで、韓国BL作品も大分市場に浸透してきた印象です。
南米圏のBL市場動向
デジタル配信の拡大: 前年比+40%の成長率を記録。
韓国や中国作品の影響力拡大: 韓国BLウェブトゥーンが新たなファン層を獲得してきています。中国作品では 魔道祖師・天官賜福といった日本でもメジャーなBL作品の他、原神などのゲームの二次創作も見かけるようになってきています。
現地作家: 南米独自の文化や背景を反映したオリジナルBL作品が増加中
BL市場の特徴
南米におけるBLコミックス市場には以下のような特徴があります。
社会文化的背景の反映: 南米特有の価値観や社会問題が物語に取り入れられています。
デジタルプラットフォーム主流: インターネット普及率の向上に伴い、多くの作品がオンラインで消費されています。
現地作家の、韓国・日本作品の影響: 人気作品からインスピレーションを得つつ、現地の独自性を加えた表現が増えています。現地作家の作品も調べると出てきており、盛り上がってきていますが、商業的に日本や韓国のBL作品ほど成功しているかとまだもう少し掛かりそうといった印象を受けています。
今後の展望
BLコミックスは、南米においてさらなる成長が期待されるジャンルです。デジタル配信の普及に加え、国際的な作品と現地作品の相互影響が市場の多様化を進めている印象です。
もしかしたら、将来的に人気作家が南米から生まれるかもしれないです。
日本コンテンツの世界的ヒットは南米から芽吹く可能性もまだまだあるように思います。