封鎖ループと損失回避性

前置き(封鎖ループの話)

封鎖ループとは、ある程度引ききれる(倉庫などの手札交換系による疑似引き切りも含む)デッキで毎ターン交互に封鎖を使う行動を指します。特定のカードを相手の獲得を完全に封じながら独占することができ、特にそのカードが代替不能な場合(他に村系が無い時の村など)は非常に強力です。一度相手の封鎖ループが開始してしまえば抵抗する手段は無いでしょう。相手が事故って封鎖を打てないターンを待つしかありませんね。封鎖されたカードを封鎖し返せば獲得できるとはいえまさか4コスト以下のカード1枚のために呪いを受けるわけにもいかないし……。

本題

ここで注目したいのが、損失回避性、つまり損を同程度の得よりも過剰に評価してしまうという人間の性質です。株式投資の初心者が(同程度の損得で)利益確定はできても損切りはできないことなどに代表されるでしょうか。

封鎖されたカードを封鎖し返す行動は、まず呪いを受けるという明確な損が発生するために、実際よりも悪い、つまり選択したくない行動として感じられている可能性がある、ということです。前置きの文のうち、特に太字部分は損失回避性の影響を受けた極端な考えと言えるでしょう。

無論、呪いを獲得するという損失は大きいもので、封鎖されたカードには触らないという選択が正しい場合が多いです。しかし、集めたいパーツを獲得でき、また同様の選択(呪いを受けるか封鎖し返すか)を相手に迫ることができる、つまり後手に回ったとはいえある程度対等な状況を作れるという得と、呪いを受けるという損を比較検討する際に、損の方を過剰に評価してしまい正しい判断ができなくなっている、あるいはそれ以前に、「獲得したとき呪いを獲得する」を勝手に「獲得出来ない」と読み換えてしまっているケースも存在するのではないか、というのがこの記事の主旨です。

例えば、初中級者にありがちなミスとして、そのターンに出た金量ちょうどの買い物をしてしまう、例えば2巡目に6金が出たからといって徴募官ではなく金貨を買ってしまうというものが挙げられますが、これも徴募官を買うことでそのターンに1金を余らせてしまう、つまり1金の損をすることを過剰に嫌った結果のミスと言えるでしょう。他にも、(2金カードが屋敷しか無い時の)2巡目銅4改築や、弱いシャッフルが入ってしまう時のドローカード等「プレイしない方がいいアクション」をプレイしてしまったり、広場で財宝を捨てて財源を得たせいでそのターンに工房系で獲得したカードを引いて使う動きが出来なくなったりと、損失回避性の影響を受けたミスはかなり多く見られます。

まとめ

ドミニオンでは損得の感覚に基づいた判断をすることが多いです。その感覚に損失回避性が働いている可能性があることを知っておき、意識することで、より良い選択が出来るようになるでしょう。

余談(議論の補完)

ここからは余談です。そんなに重要なことは書いてないので、読まない、読み飛ばす等して頂いて問題ありません。

・本文の議論は、ゲーム中の選択において損失回避性が働いている可能性を示し、それを知っておくことで実際の選択を適切に行う為の補助とすることを目的としており、個々のケースの判断の是非についての議論ではありません。2巡目の6金で徴募官より金貨を買うべきサプライも存在しうります。

・封鎖し返すのが強い選択肢となりうるケースは限られていますが、例えばサプライに村が吟遊詩人しか無い(かつ村の価値が高い)サプライでしょうか。吟遊詩人はそれ自体がデッキを回転させて次の封鎖にアクセスすることを助けるため、序盤から封鎖ループを簡単に行えます。しかも吟遊詩人の効果で呪いのダメージも少し緩和できます。

・前置きで、封鎖ループから抜け出す手段として相手の事故を待つことを挙げましたが、実はこれはあまり推奨できません。封鎖ループをしている側は脇に獲得することで初動を安定させつつパーツをかき集めており、どんどん動きが安定していくためです。

・呪いはとても痛いです。損得の判断に損失回避性が介在している可能性があるからといって、今度は損を過小評価して選択ミスをしては本末転倒です。

ご挨拶

以上はドミニオンアドベントカレンダー2022の14日目分の記事です。昨年末時点では自分は初心者で、ドミニオンAC2021を含むドミニオン関連記事を読み漁っている頃でした。それゆえ、今年発信する側として記事を書けたのは非常に感慨深いです。この機会を設けて下さったうりはりさん、またこれまで様々な記事を書いて下さった皆さんに御礼申し上げます。
https://adventar.org/calendars/8028

#ドミニオンAC2022
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