『ばね』という芸術品
by エムケイコンサルティング商品課
ばねというわき役
螺旋形のばねがあるのは自転車のサドルの裏、車やバイクの中、ボールペンの中。。。
バネは身の回りのさまざまな製品に使われていますが、コイルばね・板ばね・渦巻きばね。。。みんな黒子のようなもの。そう、わき役。だから誰もその存在が見えていても見ていない。
今回のお話は、そんなわき役たちが主役に跳ね上がったというお話です。ばねだけに。。。(笑)
ばねマイスター
東京スカイツリーから直ぐ。弊社の食品メニュー研究所がある墨田区は職人の町。ここに、一人のばねマイスターがいます。彼がつくるのは工業用のばね。そこへ、一人の女性デザイナーが訪ねました。マイスターの工場に所狭しと並んだばねを見たデザイナーは、その瞬間、美しく完成された大小様々なフォルムのばねに魅了されてしまいました。
マイスターがつくるばねの虜になった彼女はバネを使ったデザインプロダクトを世に送り出すべくhaneプロジェクトを開始しました。haneとは、ばねの語源である「跳ね」がもとになっています。
ずっとずっと製品のわき役だったばねが、主役に跳ね上がる時が訪れたのです。
試行錯誤を重ねてプロジェクトの主役となった『ペーパーホルダー』が完成しました。
4メートルのピアノ線を写真のように加工してアルミプレートで抑え込むシンプルな構造ですが、加工も仕上げも困難を極めた結果、ついに最高に美しいオブジェが完成しました。
MoMA ニューヨーク近代美術館
1年以上の試行錯誤のすえ生まれた『haneペーパーホルダー』は、まったく売れませんでした。
ところが、米国のMoMAデザインストアのバイヤーがhaneペーパーホルダーを評価して販売オファーが舞い込みました。仕上がりも美しく横から見ると、まるで扇を広げたようで、日本らしい製品だと絶賛しました。米国のMoMAデザインストアで発売すると同時にヒット商品になり、のちに、MoMAのオリジナルアイテムとして販売され、その後、世界中に販路を拡げました。
日本での販売
海外での噂が聞こえて、日本でも、あちこちから引合いが入り販売が始まりました。弊社のクライアントの一つ、銀座吉田がペーパーホルダーの卸を始めて、デザインショップやミュージアムショップさらにアパレルショップへと納品先を拡大した結果、国内でもヒット商品になりました。
haneペーパーホルダーは
2006年 グッドデザイン賞受賞
2010年 グッドデザインロングライフデザイン賞受賞
現在は、文具オブジェとして、セレクトショップやアパレルショップ・ライフスタイルショップなどでも人気商品として販売されています。
一人のばねマイスターと一人のデザイナーによって、脇役だったばねが、なんとMoMAデビューして一気に主役に跳ね上がったというお話でした。