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スポーツの楽しさって何だろう

この記事では僕が思うスポーツの楽しさについて幼少期の僕と祖母、この二者の実体験を通してお話しています。
この記事が、是非スポーツ観戦のきっかけの1つになれば嬉しいです。


「いっちろぉ〜〜〜!!!」


父に連れられて札幌円山球場でオリックスブルーウェーブの試合観戦に訪れた。
対戦相手は覚えていない。
勝ったのだろうか。負けたのだろうか。

ただ…1つだけはっきりと


「いっちろぉ〜〜〜!!!」 


打席で構える若き日のイチローに外野スタンドの男たちに負けじと絞り出す。

「いっちろぉ〜〜〜!!!」


僕は必死に叫んでいたあのフレーズだけは生涯忘れることはないだろう。

プロ野球では選手の打席を迎えると、それぞの選手に親しみを込めて作られた応援歌や掛け声が選手たちへ届けられる。

北海道日本ハムファイターズの大ファンだった祖母は、うろ覚えの歌の後、好きな選手へ声援を送っていた。


ゴーゴーレッツゴーレーアード!!!


ある日、親しい友人たちと札幌ドームへ試合を観戦をして帰宅したすぐ後くらいであったと思う。

動線にするとキッチンから1番遠い最奥の指定席で、
ツインスティックを叩いて楽しそうにブライアン・レアード選手へ声援を送る祖母の姿があった。
母が持たせたその応援グッズの使い方を覚えてきたらしい。

レアード選手は長打力とその明るくて素朴なキャラクター、
HRを打った後の「寿司」パフォーマンスで人気の選手だ。

祖母はその寿司パフォーマンスがとても好きだった。

ちなみに祖母はファンになってしばらく経ってからも配球や守備シフト、ケースバッティングなど細かい戦術は知らなかった。

選手がホームに返ってくれば1点、バットを3回振ったらアウト、3人アウトになったらチェンジ、そのくらいだろうか。
「ホーム」や「チェンジ」といった言葉すら聞いたことはない。

それでも楽しそうに野球を観て選手たちへ声援を送っている。

祖母は球場で感じた熱を持ち帰ってきたのだ。

打ったーーーーー!!!

アナウンサーが叫ぶ試合が動くその瞬間に興奮を覚え、

その瞬間が来るまで会場一体となって選手へエールを送っていることがたまらなく楽しい。 

時に応援している選手が守備でエラーをする。
「今のなんだよー」

時に応援している選手が勝負どころでバットを1度も振らずに三振する。
「打てよーーー」

期待の裏返しでそんな言葉が漏れることもあるだろう。


この大地を照らす 希望を胸に 信じる皆を背に ホームラン
ゴーゴーレッツゴーレーアード!!!


  

送った声援の分だけ自分の気持ちは大きくなっていく。















僕が短い人生の中で初めて野球場に足を運んだその日、座したのは大きな楽器を持った大きな男たちが贔屓のチームのために人生を賭して盛大に音を鳴らす戦場、外野スタンドだ。

初めて見るその光景に身を縮め、母の手を握った。

試合が始まって間もなく途端に会場が浮き足立った。

若きスーパースターの名前が、ウグイス嬢の柔らかい音に乗って会場に響く。




センター イチロー


「せぇーのっ、イッチロォォォォォォォ!!!!!!」




静寂の中に広がるその選手の名前はホームタウンから遠い遠い札幌の地で空高く響き渡っていた。

心臓の鼓動が速くなる。

当時のスーパースターを一目見に訪れた巨人ファンの父が言う。

「ほら、一緒に言うぞ!!イッチロォォォ!!!!!!」

「ぃ…ろぉ…」

戦場で戦うには小さすぎた。
感じたことのないくらいの恥ずかしさが全身から飛び出した。
と同時になんとも言えない誇らしげな気持ちがほんの少しだけ残っていた。






迎えたイチローの最終打席。




近い将来世界の舞台で名を馳せる振り子打法の男が打席に向かう。


右足を前に右手に持ったバットを空へ向けた。


「せぇーのっ」



ゆっくりと右腕をボールが飛んで来る方向へに一杯まで伸ばし切ったその瞬間


「イッチロォォォーーー!!!!!!」

「いっちろぉ〜〜〜!!!」 





「せぇーのっ」



「イッチロォォォーーー!!!!!!」
「いっちろぉ〜〜〜!!!」 


今日はもうバットを持たないであろう選手を遠くに見つめた。

「いっちろぉ」の名前と確かな高揚感を胸に、母の手を握って帰路に着いた。









僕は今北海道コンサドーレ札幌、サッカー日本代表のサポーターです。
ほんの少しでも選手たちが活躍する手助けになれることを信じて全力で声援を送っています。
Jリーグのホーム・アウェーゲームはもちろん、W杯でも現地へ赴くまでの熱量を持つまでになりました。

こうした熱のきっかけはイチロー選手だったと思います。
彼に送った「熱」がなければ、僕にとってサッカーはこんなにも大きなものにはなっていなかったでしょう。

祖母も僕と同じように球場の「熱」を持ち帰ってきました。

ローカルTV局で毎日のように放映される日本ハムファイターズの試合を必ず観戦し、時には友人と一緒に札幌ドームに足を運んで楽しそうに声援を送っていました。

以上のことから
僕も祖母も球場で感じた熱を契機に、野球に応援という形で参加することに楽しさを見出しています。

【熱を持って関わる全ての人が参加することができること】

それこそがスポーツ楽しさなのかもしれません。

ありがとうイチロー
僕にきっかけをくれて

ありがとうレアード
いつも祖母を楽しませてくれて
来シーズンも日ハムのユニホームで寿司を握る君が見たかったよ…

終わりです。



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