Daniel Aged - You Are Protected By Silent Love (2021)
総評: 8/10
2枚目のソロアルバム。オーソドックスに手堅く仕上げてきたな、という印象。爽やか。淡い。
Daniel Agedと言えば、孤独感の強い独特の音作りが特徴で、1st『Daniel Aged』では奇抜な音の使い方(特にアコギの大胆な差し込み)が目立っていた。だが本作はスムースで耳馴染みが良く、良い意味で聴き流せる作品、つまり機能的なアンビエント作品として見事に仕上げられているように感じた。
代名詞であるスティールギターと細かいベースプレイはいつも通りながら、本作ではアコギとエレピの多用が目立つ。その二つの楽器によって、Pacific Coliseumの名作『Blue Universe』も思い出させるバレアリックでトリッピーな雰囲気が生まれている。さながら地中海のサンセットをうっとりと眺めているかのような。アコギとピアノは曲を上品かつ爽やかに彩るためだけに使われており、エキセントリックでショッキングな効果は持たされていない。
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耳を惹いた曲をいくつか。スティールギターの波紋が優しく広がる"Whole Heart"。この人に期待する音が出だしで早速出てくる。
"Home_Lost"は80年代シンセポップ/AORで多用されるシンセエフェクト(ヤマハDX-7にリヴァーヴをかけたもの?)が印象的。敢えてマット加工されたミックスも◎。淡いピンクに彩られた華やかな世界が広がる。
"Fruit 28"はInc. No World『Living EP』でも使われていた、ガットギターのミュートされたアルペジオが程よい親密感を生み出している。そこにアコギを絡ませたある意味アイデア一発勝負な曲だが、それでも聴かせるのはセンスの賜物。
"Sub Rosa"はエレピとスティールギターが見事に調和し、悠久のランドスケープが眼前に展開される。この人のセンスが見事に結晶化した傑作。すごく綺麗。この音の世界に行きたい。
"Stone Face"と"Crown"はアコギのアルペジオとシャレオツドラムンベースが軽快な印象を生む。本作のバレアリックなイメージにダメを押す。
ラスト"Not A Dream"では鳥の囀りをSEに使っている。物凄い風景喚起力。植物園のBGM。
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個人的にこの人には最大限の期待をしているので点数は8点止まりだが、客観的に見たら相当完成度の高い決定的な名盤と言って良いと思う。こういうアルバムは聴けば聴くほど好きになる一方なので、点数は今後しれっと上方修正するかもしれない。あと、流石にそろそろInc. No Worldの新作が聴きたい。
まず聴くなら1,3,7かな。
Bandcampは非ハイレゾ。