No Rome - It's All Smiles (2021)
総評: 8/10
初のフルアルバム。とはいえ、たった27分。多くを詰め込むよりも、一つのテーマに沿った短いフォーマットを好むと話している。Mattew Healyと真逆なのが面白い。
George Danielがプロデュースということで察する部分もあるが、The Japanese HouseなどDirty Hitの先輩の音をそのままなぞった印象を受ける。個性があるとすれば多用されるノイズ・カットアップで、特に1,2,3などはオーバープロデュースと強く感じる部分もある。
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しかし本作の美点は、その破滅的で過剰なノイズがどれだけ曲を覆い尽くそうとしても、それを凌駕する人間臭いメロディとエモーションが必ず立ち昇ってくるところだと感じる。その瞬間には、鳥肌が立つような美しさとパワーがある。
ノイジーなサイレン鳴り響く"Issues (After Dark)"からエレガントな"Remember November / Bitcrush*Yr*Life"への切替には思わずドキッとさせられる色気がある。無人の湾岸に響くインダストリアルドローン"It's *Not* Lov33 (Winter In London)"からブリットポップ的なメロディの"When She Comes Around"に入っていくのも実にエモい。"Everything"では流麗なメロディがドラムンベースとフィードバックノイズにまみれ、壮絶なラストを迎える。その全てが、No Romeという人のスキルの高さと情熱を物語っている。
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『Notes On A Conditional Form』(2020)でのThe 1975には、嘲笑・傍観・諧謔という唾棄すべき態度は一切無かった。代わりにあったのは、ただ未来を渇望する真直な目つきだった。それが彼らの最大の美徳だ。本作のNo Romeからも同じ匂いを感じる。
だがまだ信じ切れないのは、どうしてもThe 1975の亜種に聴こえてしまうからだ。もう少し独自性を掴むことが出来れば、世界的なアーティストになるのも時間の問題だと思う。
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