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Caroline 『Caroline』 (2022)
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9/10
★★★★★★★★★☆
イギリス/アイルランドのポストパンク/ポストロックシーンの活況はここ5年間、目覚ましいものがあるが、個人的には今ひとつ乗り切れないでいる。奇天烈なものやラウドなものが好きではない人間からすると、魅力を感じるバンドがどうにも少ない。
そんな視野の狭い人間でも好きになったバンドが3つだけある。Fontaines D.C.、Deathcrash、そしてCarolineだ。それぞれかなり音楽性が異なるが、共通するのはまずとてもメロウで感傷的だということ。スタイルより実存を優先すること。無理がないこと。そして結果としてインパクトよりも美しさが先に立つこと。
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Carolineはその中でも特に繊細で清廉な音を演奏する。ストリングス/アコースティックギター/クラリネット/ピアノ等が即興的な演奏を聴かせるが、耳に残るのはその静寂<無音>の多さ。音を鳴らすということは、音をいかに鳴らさないか、でもある。そこに着眼点、スタート地点がある。
澄み切った空気を大胆にあやつり、静と動のスペクタクルを繰り広げる。一つ一つの音の意味を重視した大胆な音場構成とそれによる緊張感は、Bark Psycosis『Hex』やTalk Talk『Laughing Stock』を彷彿とさせるものがあるし、一方で、春を待つ新芽のような、柔らかい希望に満ちた音からは、Noah And The Whaleの忘れ去られた名作『The First Days Of Spring』なんかを思い出す。心が洗われる。
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たくさんのバンドが世に溢れているが、私にとってはこういうバンドさえ聴ければあとはもうどうでもよい。そんな愚かなフレーズを吐きたくなる。そう思わせてくれるバンドは数少ない。Deathcrashと同様、追い続けていきたい。