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2024年上半期 新譜振り返り


2024年上期にリリースされたアルバムを、レビュー済みと未レビューに分けて整理。例年と比べると興奮するアルバムは少ないかなという感じ。


◆レビュー済みアルバム



◆未レビューアルバム

レビューはしていないけど印象には残っているアルバムの感想を簡単に。


Julian Lage 『Speak To Me』 ★8/10

彼の作品の中で一番好きかもしれない。アメリカーナの探究というテーマはここ3〜4作と同じだが、よりアコースティックギターを増やし、私好みの郷愁を感じさせるようになっている。直近の『View With A Room』『Squint』は部屋の中でまったり寛ぐ感じだったが、本作のように草原に出て奏でられるようなギターもまた良い。


Royal Headache 『Live In America』★8/10

2012年のWFMUでのスタジオライブ8曲と2015年のEmpty Bottleでのライヴ9曲を収録したコンピレーション。特に良いのは後者で、名盤『High』リリース時のバンドの勢いがそのまま出ている。

アルバム未収録”So Low”のようなバラードでの憂いが尋常ではないのはもちろん、ファストな曲からも哀愁が漏れ出てしまうのはもう先天的な才能だった。The Replacementsを超えてるんじゃないかと思うほどソングライティングの神に愛されたバンドだった。このバンドが解散したのは2010年代ロック最大の損失の一つだと真面目に思う。


Casey 『How To Disappear』 ★8/10

復帰作。ポストハードコアも遂にここまで来たかと思ってしまう感動的な名作。ポストロックやシューゲイザーやエモの要素も織り交ぜ、これらのジャンルのもう決定版と言っちゃいたい完成度を誇る。1曲目なんて超名曲だし今年最高のエモ。逆に言えばデザイン重視で洗練され過ぎていて突き抜ける個性が足りないし、もう少し抑揚やシャープさが欲しいなとも思うが、不満はそのくらい(その感想なにかに似ているなと思ったら、3rdの時のColdplayに感じた感覚と全く同じだった)。


Been Stellar 『Scream From New York, NY』 ★7/10

暗い激情ってなんでこんなに良いんだろう。HumKentを思い出させる特別な雰囲気がある。自己革新を繰り返せるタイプのバンドなのか、先人の音をなぞるだけなのか、それが明らかになる次作は要注目。The StrokesArctic MonkeysFontaines D.C.みたいに時代の流行り廃りを超えたところで悠然と聳え立つカリスマになっていってほしい。「オルタナをマーケティングの視点で分析して20年代っぽくオシャレに再解釈してみました」的方向にだけはいかないでほしいが、Dirty Hit所属というのは一抹の不安。


Twenty One Pilots 『Clancy』 ★7/10

期待の最高ラインは超えなかったけど、最低ラインは決して下回ってない。曲調は多様だが、いつものような遊び心に溢れているというよりは端正で真面目なプロダクションがされている。曲自体は5,7,8,10,11など地味なものが多く、それにその真面目なプロダクションがかけ合わさっているので、全体的には思ったより地味な印象を残す。いずれにしても1,2,4,9,13など良い曲の多い佳作であることは間違いないし、『Trench』は超えられないにしても『Scaled And Icy』よりは好きだ。


Chanel Beads 『Your Day Will Come』★7/10

Prefab Sproutに影響を受けて〜」という宣伝文句にまんまと釣られてホイホイ聴いた。結果的には音もスタンスも180°真逆だったが、このアルバムはすごいと思う。私がドリームポップというジャンルに求める要素を全て体現してしまっているような気がして、割と驚いている。現実とほぼ一緒なんだけど何かが決定的に異なっている気味の悪い世界。ミックステープ的なラフさがあるので、本格的に名盤作るモードに入ったら凄いものができそう。


Still Woozy 『Loveseat』 ★7/10

前作には忘れ難いフックを持った曲が感動的なまでにゴロゴロ収録されており、親しみやすさ/若さとは裏腹にプロとしてのプライドすら感じさせた。今回は前作ほどではないが、及第点の曲が並んでいる。

現代のポップミュージックは時代性とか意味とかスタンスとかイデオロギーとかそういうものを求め過ぎだと思う。そういうところから離れ純粋に楽しさを追求したインディロック。


Grandaddy 『Blue Wav』 ★6/10

カントリーに接近とか言われているけど、なんのことはない、いつも通りのまったり夢見心地なインディオルタナ。もはや特に感想もない。曲は良い意味で印象に残らない。心地よい夢を見てたけど起きたらあんまり覚えていない、あの感じ。


Bloom 『Maybe In Another Life』 ★6/10

一寸の迷いもなく駆け抜ける30分のメタルコア。BMTH以降のハイブリッドな感覚に満ちている。こういうスカッとしたのが聴きたいときに聴いていた。特に感想は無し。


Ride 『Interplay』 ★6/10

Tears For Fears『Songs From The Big Chair』, Talk Talk『The Colour Of Spring』, Depeche Mode『Violator』のような80年代後半〜90年頃のロックバンドの影響を受けたと語っている(そんなに似てる感じはしないけど)。音の完成度はすごく高いと思うし良い曲もある。

ただ、頭デッカチで風通しの悪い感じが否めない。この硬派な曲調×60分は流石にダレる。”Portland Rocks”みたいな爽やかな曲がもっとあって45分くらいに収めていればなと思う。


Telever 『Inside The Game』 ★6/10

ヘヴィシューゲイザー/ポストハードコア。半分くらいNothingそのままな気もするけど気にしない。この手のバンドはミックスの精度が生命線だと思っているけど、このアルバムは豪快さと繊細さを両方兼ね備えた、考え得る限りで最高のミックス。スネアの録音も良い。一方でボーカルとボーカルメロディはシューゲイザーということを差し引いてもちょっと弱いのでもう少し鍛える必要があると思う。今度ライブ行こうかな。日本限定CDをタイでも売ってくれ。


Dehd 『Poetry』 ★6/10

エモすぎる前々作『Flower Of Devotion』が最高傑作で、前作『Blue Skies』は曲に輝きが無かった。本作は彼らにしては色々な音色を取り入れ、方向性を模索していることが分かる。曲も前作よりは良い。しかしFire Talkのここ数年の充実ぶりは凄い。


Alcest 『Les Chants de l'Aurore』 ★6/10

5年ぶり、待望の8thアルバム。前二作のようなポスブラ回帰ではなく、それこそ私のオールタイムシューゲイザーアルバムランキング第3位の『Shelter』に近い、陽の光を浴びる暖かな作風になっている。シャウトもそんなに無い。いつも通りの完成度で楽しませてくれる安定の一作という感じ。


Washed Out 『Notes From A Quiet Life』 ★5/10

1stに近いシンセポップ+ドリームポップ+クラブ=チルウェイヴ。しかし1stのあの強烈にメランコリックな哀感がオミットされ、一方で新たな要素も特に無いという、ドライで単調な作風になってしまっている。あの当時はそれでも新しかったけど、今となっては何も新しくないし、むしろ没個性になってしまうのは辛いところ。もう少し特別な何かが欲しい。AIに作らせたPVが炎上していたが、実は音楽自体もAIに作らせたものだと言われても驚かない。


Shellac 『To All Trains』★4/10

こういう歌心皆無のギスギス系ポストパンクが昔から苦手だ。Jesus Lizardにハマっていた5月にリリースされたので今ならいけると思ったが、やはりダメだった。逆にJesus Lizardばっかり聴いていたせいで、どうしてもあっちの演奏に比べてしまう。勝ち目が無い。28分しかないのに2時間くらいに感じる。



◆下半期の楽しみなアルバム

下半期は、Cigarettes After Sex, Wand, Wunderhorse, Fontaines D.C., Cold Gawd, Belong, Jesus Lizard, Nilufer Yanya, The Voidzなどがとりあえず楽しみ。TravisSnow Patrolの新作もそこそこ楽しみ。PeaceBlack Foxxesもそろそろリリースしてくれないかな。下半期はハードコア系とヘヴィシューゲイザー系の二つを掘っていきたい。

WunderhorseFontaines D.C.は、若手ロック界においては頭抜けた才能を持つ2大バンドと勝手に思っているし、実際に先行曲も良いので、年間ベスト級を出してくれると信じている。


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