Sam Gendel & Antonia Cytrynowicz 『Live A Little』(2022)
7/10
★★★★★★★☆☆☆
Sam Gendelの新作は、知り合いの11歳の女の子、Antonia Cytrynowiczをゲストボーカルに迎えた作品となっている。
ボイスチェンジャーを使用したかのような独特の高音ボイス。Sam特有の飄々/悠然とした世界観を少しゴシックで不気味なベクトルに押し進める、そんな役割を彼女の歌は担っている。淡々としながらも裏では何か普通じゃない感情が蠢いている、そんな印象を受ける。メロディにはクラシックな優しさもあるが、終始無表情な歌声が底冷えする余韻を残す。それでいて子供特有の深刻にならない軽さ=抜け感の良さもある。
"Wondering, Waiting"でのサックスとボーカルの見事な融合や、"Blind"での複数本のサックスと清冽なアコギに重なるスキャットは、本作でも有数の美しい瞬間だろう。"Something Real"のシンセの濃霧、"Treasure That I Treasure"のマイナーアルペジオなどには異形の美(=ゴシック)を感じるし、逆に比較的オーソドックスなソウル"Seconds Rolling By"のクラシックなメロディにはうっとりしてしまう。"Clouds In Me"はアコギの弾き語りで、抜けの良い爽やかな(?)ラストを迎える。
アバンギャルドな演奏とゴシックな美を漂わせるボーカル。異様で特異ながら、独特の抜けの良さまで備えたムード。あまりお目にかかれないタイプの傑作だと思う。