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Horsegirl 『Phonetics On And On』 (2024)
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5/10
★★★★★☆☆☆☆☆
最近の90’sオルタナオマージュ系バンドを観察していると、セカンドアルバム以降の方向性としては大きく分けて三つあるように思う。一つ目は憤りの対象に向かって叫ぶ攻撃的なバンドになること。二つ目はポップさと親しみやすさを押し出した普遍的な作風を目指すこと。三つ目はセンスに任せたハッタリと紙一重のアート系インディロックに進むこと。
Horsegirlが本作で選んだのは紛れもなく三つ目の方向性だ。影響源として挙げているのはVelvet Underground 『Loaded』, Faust 『Faust IV』, Young Marble Giants, Television Personalitiesといった、まさにセンスだけで行けるところまで行ってしまった連中の音楽。本作もそれらの音を参考にした、オーバーダブなし・隙間多め・感情希薄のぶっきらぼうで潔いセンス/アート系インディロックになっている。
何がやりたいのかが明確だし、実際見事に形になっているとは思う。メンバーとプロデューサーのイメージが一致していて、そのイメージ具現化のための豊富な引き出しをプロデューサーが持っていて、そのプロデューサーの指示にメンバーが見事に応えた結果だと思う。
ただしそうやって生み出された本作が、結局は過去数十年の間に生み出されてきた典型的なインディロックアルバム以上でも以下でもないものになってしまっているのは残念だ。プロデューサーの技術とバンドの器用さがむしろ仇となり、「なんかどっかで聴いたことのあるそれっぽいインディロックアルバム」に小さくまとまってしまったように思う。
リファレンスとノウハウで作られた音楽は時代を超えないし、Velvet UndergroundはVelvet Undergroundっぽい先輩バンドの音を真似てああなったわけではない。彼女たちにしか無い独自の何かをもっと見せてほしいと思う。
6,7なんかはまさにセンス系の面目躍如。