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Lo Moon 『A Modern Life』(2022)
7/10
★★★★★★★☆☆☆
LAのインディロックバンド。2018年の『LM1』以来となる2ndアルバム。2020年の早い時期にほぼ完成していたようだが、レーベル移籍やコロナの影響もあり、リリースが2022年2月までずれ込んだ。プロデュースはChris Walla。
上品で端正なアート系インディロック。派手な80's風シンセだったり、ファンキーなベースだったり、ビッグなリズムだったり、ギターソロだったり、そういった引っ掛かりになる部分が全く無い。インディポップの本質の部分のみを抽出し培養したような音楽。
実際、サウンドはとても丁寧で実直だ。リヴァーヴのかけ方からコーラスの響き、シンセの音色の多彩な使い分け、ピアノの効果的な使い方、音の密度の適切な加減まで、地味だが職人的なこだわりが細部に宿っている。結果、1st以上に滑らかでジェントルな作品に仕上がっている。それでいてLANYやNight Travelerとも共通するポップセンスも持っている。かなりの実力を感じる。
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ほとんど欠点の無いアルバムだが一つだけ思ったのは、彼ら固有のテーマ、ムード、情緒、つまり作家性がもう少し表に出たらいいな、ということ。表面のデザインは完璧に磨き上げられているが、彼らの内面のリアルな感情やこみ上げる思いというものはあまり感じられないのである。
例えば愛聴盤だというThe Blue Nile『A Walk Across The Rooftops』の都市の生活者としてのクールな目線だったり、敬愛しているというTalk Talk『Laughing Stock』の暴力的な静けさだったり。LANY『Malibu Nights』の失恋の後悔が夜に溶け込むエモさもいい。そういった作家性が今後もう少し出てくれば、よりよい作品が出来るのではと思う。それこそが、「普通に良い作品」と「忘れられない傑作」との境目だと思うから。
"Expectations"や"Eyes On The Prize"など、良い曲を書く能力は1st同様、かなり高い。3rdアルバムのレコーディングも既に始まっているという。楽しみに追っていきたい。
キャッチーな2,3,4でしっかり掴み、6,7,8で流れを深め、9,10で軽やかなラスト。Tears For Fearsの新作が好きな人にもおすすめしたい。それにしても声がMark Hollisに似ている。