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Men I Trust - Untourable Album (2021)
総評: 8/10
前作『Oncle Jazz』と同じようなサウンドだが、前作でも特徴的だったフランジャーの効いたシンセがより濃くなり、輪郭が滲み、深い霧が立ち込めるサイケデリックな作風となっている。フレーズやパーツを見れば相変わらずフックに溢れているが、このシンセの霧を搔き消すほど強烈なものではなく、ムードに調和するようなものとなっている。総じて、圧倒的な完成度の高さを誇る。これ以上のドリームポップを見つけることは困難だろう。
ここからはすべて蛇足だが、私はこの人たちの音楽は、マンション高層階でチアシードとカットフルーツを食べ、コーヒーを飲み、壁掛けTVでネットフリックスを観る、”余裕”のある人が聴く音楽だと思っている。暗い部屋で失意や悲痛の中にいる人が逃避を求めて聴く音楽では決してない。嗜好品としてのドリームポップを感じる。
自身の音楽を冷静かつ客観的に把握/評価する能力に長け、リスナーにとって何が気持ちいいのかを120%理解している人間の作る音楽である。ドリームポップの黄金律を的確に突いてくる。これは徹底した職人の音楽だ。
完璧なテクスチャーとハーモニーがあれば他に何もいらない。リスナーからの独りよがりな自己投影や感情移入も求めていない。もっと言えばこのバンドはいつもName Your Priceなのである。金すら要らないのだ。
4233kbps、24bit。ハイレゾ。音質はかなり良い。