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Silversun Pickups 『Physical Thrills』(2022)
4/10
★★★★☆☆☆☆☆☆
前作の5th『Widow's Weed』(2019)には相当ガッカリした記憶がある。「古き良き90'sオルタナティヴロック」に拘泥するような進歩の無い音作り。オルタナティブロックを前進させる進歩的な傑作をリリースし続けてきた彼らも遂にネタ切れかと感じてしまったのを思い出す。
本作は、前作よりは挑戦的な部分が垣間見える。冒頭の3曲で分かる。アコギのアルペジオと儚げなボーカルで幕を開ける"Stillness (Way Beyond)"、打ち込みとアコギの刻みがミニマルに重なる"Sticks And Stones"、ピアノのリフが華麗に響く"Hereafter (Way After)"。サウンド面で再びトライし始めたのは嬉しい。
ただしどうしても気になるのが、どの曲も「元気が無い」ということ。感覚的な言い方になってしまうが、演奏にはかつてのような全てを薙ぎ倒すグルーヴが無いし、ボーカルにも力がこもっていないし、ソングライティングも弱い。勢いがあるなと感じられるのは、"Sacred Together", "Stay Down (Way Down)", "Hidden Moon"くらい。どうしてしまったんだろうと思ってしまう。
大好きだったバンドの新作としては、満足できる出来とは言いがたい。YouTubeやレビューサイトのコメントを見ても、「悪くはないけど…うーん」「期待するからガッカリするんだよ、期待しなければ十分聴けるよ」など、なんとも歯切れの悪いコメントが散見される。私も同感。何とかもう一花咲かせてほしい。
4, 10, 14は箸休め的小曲。MBVを意識しているらしいが、あまりそうは聴こえないのが彼らの面白いところ。シングルの5で使用されているTalkboxは、プロデューサーButch Vigには使いたくないと反対されたらしい。曰く、Garbage時代にやって失敗したからもうやりたくなかったそう。しかし、器材を既に発注してしまっていたので、渋々手伝ってもらったようだ。