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2021年 ベストアルバム(旧譜) & がっかり新譜

昔から聴いてるけど今年特にたくさん聴いたアルバムを羅列。毎月書いている「最近聴いているアルバム」の年間アワードと言ってもよい。一年分の凝縮なので名盤ばかり。私の2021年はこれらによって彩られた。

普段は余計なことは書かないように努めているが、今回はたまには言いたいことを言ってもいいだろうと思ってそのまま投稿した。


The Cure 『Kiss Me Kiss Me Kiss Me』(1987)

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このバンドは陰陽を織り混ぜすぎた結果、明るい曲をやってもどうにも絶望が漂うようになった。キュートでフレンドリーな音に宿る、行き場のない絶望と閉塞感。絶壁でダンスを踊る。漆黒の海を夕焼けが不気味に照らす。1980年代以降で最も重要なロックバンドの最高傑作。
One More Time



R.E.M. 『Out Of Time』(1991)

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どこかの年にタイムスリップ出来るのであれば、1991年のロックの空気感を肌で感じてみたい。映画『シングルス』ではR.E.M.の曲は使われていなかったけど、本作こそが一番あの映画のあの雰囲気=1991年の雰囲気に近いと確信している。"Radio Song"の純粋無垢なギターリフが鳴るたび、すべての出来事を偏見/思い込み無くダイレクトに感受し、自分の感情を素直に表現していた"あの頃"に戻ることが出来る。感性を麻痺させるために大人になったわけじゃない。
Radio Song



Aztec Camera 『Dreamland』(1993)

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ポップミュージックの究極の姿とはこの作品のことだと思っている。澄んだ空気の中で繰り広げられる情熱の数々。あまりにも過小評価されている。というかスルーされすぎて、良い評価はおろか悪い評価すらされていない。確かにグランジ/ブリットポップ全盛の90年代においては音が豊熟しすぎていたし、「Azted Cameraと言えばネオアコ!」というイメージが強いのも分かるけど、、、世界的にシティポップ・ソフィスティポップ・AORが流行っている今、ぜひ脚光を浴びてほしい作品。
Vertigo



Primal Scream 『Give Out But Don't Give Up』(1994)

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優しく、悲しく、美しく、儚いロックンロールアルバム。私が音楽に求める要素が全て詰まっている。永遠のトワイライトゴールドに包まれながら、喪失と悲嘆に暮れる。なんてセンチメンタルでロマンティックなんだろう。近年ではGeorge Clintonらの参加によるファンク要素が再評価の対象になっているけど、そんなの知らん。物憂げなピアノとブルースギターさえあれば、ファンキーなベースなどお呼びでないのである。
Cry Myself Blind



Prefab Sprout 『Andromeda Heights』(1997)

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もはや語る必要も無く聴けば分かる名盤。日本でも海外でもジジババの懐旧なのかいまだに『Steve McQueen』ばっっかり取り上げられるけど、いい加減こちらも顧みられるべきでは?こんな扱われ方では絶対にいけないレベルの名盤。都会と孤独と喪失と自由。星が降る。たまらん。
The Mystery Of Love



Girls 『Father, Son, Holy Ghost』(2012)

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恐ろしいほどの名盤。それこそR.E.M.の90年代の傑作とまったく遜色無いレベルにある。他のアーティストなら表現に躊躇するような心の奥底のドロドロした情念、そして彼にとって人生とは何か、愛とは何か、それらをシンプルで混じり気のないバンドサウンドで見事に表し切る。これだよ、こういうのを求めているんだよ、と思わず叫びたくなるとんでもない名盤。
Just A Song



Inc. No World 『As Light As Light』(2016)

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政治的な主張をする音楽が存在することは素晴らしいと思うし、ドンドン主張してこの世界を良くしてほしいと思う。でも自分は聴かない。ただでさえ不条理がはびこる現代社会、音楽を聴く時間くらいは嫌なことを忘れたいからだ。「女を馬鹿にするな」「黒人を馬鹿にするな」「プラスチックを捨てるな」「脱炭素!」...もう分かったよ、明らかに正論だよ。でもどうして休息時間にまで正論プロパガンダを摂取し続けないといけないんだ? 少し休ませてくれ。そんな時にはこれを聴く。
In This Dream



Yussef Kamaal 『Black Focus』(2016)

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Yussef Dayesのドラムの迫力を最も味わえるアルバムはYussef Dayes Trioの『Welcome To The Hills』(2020)だと思うが、スタジオ録音なら絶対これ。Kamaalの余白を活かしたスペイシーな音に、豪快なスネアとキックが怒涛の如く攻め込む。二つの確固たる個が無限の快楽の中で溶け込んでいく。もうこれは根源的な意味でのセックスだ。Mansur Brownのギターは更に快楽を引き立てる。Yussef DayesはAlfa Mistとも組んだ曲をリリースしているけど、Alfaの洗練されたストリート感覚よりも、Kamaalの猥雑な密室感覚の方が、Yussefのドラムが持つ本質的な快感をより引き出せていると思う。
Remembrance



Black Foxxes 『Reiði』(2018)

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甘ったれた感傷もなく、変に突き放す冷徹さもなく、これ見よがしのラウドさもなく、ただただ激情と慈しみが入り乱れる本物のロック。こういうバンドは00年代以降、活躍の場をまともに与えられていない。その一方で、ロックの表面的な音を安易に引用したに過ぎないManeskin, Olivia Rodrigo, TXT等が「ロック復活」の象徴と持て囃される。ロックが「復活」したところで代表格がそれらなのであれば、別に「復活」なんてしてもらわなくて結構。そもそも何でそんなに「復活」にこだわるのかも謎。いいバンドはいつの時代も様々な形で十分な数が存在し続けているし、それらを聴いているだけで十分楽しめるのに。
Manic In Me



The 1975 『Notes On A Conditional Form』(2020)

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誰もが固有の音で一点突破を目指す20年代において、これほど全ての音を取り込み、自分のものとし、肥大化を続けているバンドが他にいるだろうか。Tears For Fearsからの影響を隠さない彼らだが、音そのものというより、ロックと一体化しすべてを手に入れようという心の奥底で煮えたぎるマクロ精神と、しかしそれを前面には出さぬまま社会情勢をあくまで個人のパーソナルな感情として投影するミクロな語り口とのコントラストこそがTFFの影響下にあると感じる。つまりは、野心を感じさせない野心こそが一番カッコいいのである。(そして私の妻をはじめとして、野郎だけでなく女性や子供にも受けるのが彼らの実は一番すごいところ)
Nothing Revealed / Everything Denied




■がっかりアルバム

ついでに、今年のがっかりアルバム5枚も一文で振り返り。好きなバンドで期待していたからこそ、がっかり。

Communions 『Pure Fabric』

勢いも成熟も感じられず、中途半端に感じた。

Twenty One Pilots 『Scaled And Icy』

締まりの無い間抜けなポップロックなどTOPに求めていない。

Jordan Rakei 『What We Call Life』

単純に曲が全く書けていないし、この人の良さがよく分からなくなった。20年の『Bluenote Re:imagined』収録の"Wind Parade"はめちゃくちゃかっこよかったのに。

Biffy Clyro 『The Myth Of The Happily Ever After』

単純に今までで一番曲が書けてなくて、B面集みたい。

Courtney Barnett 『Things Take Time, Take Time』

彼女の良さは鋭い歌詞と小気味良いギターサウンドだと思っていたけど、両方無くなって、ありきたりなシンガーソングライターになってしまった。






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