2020年 好きなアルバム
今年の新作で好きなものを10枚。どれも同じくらい好きだが、便宜上、ランキングに。どれも思い入れの強い大好きなアルバム。
10位 Pure X - Pure X
ザックリしたディストーションギターと虚無。世界を夕焼けで永遠に染めてしまうような。サイケデリックロックの真髄がここにある。
Pickup: Middle America
9位 DEHD - Flower Of Devotion
"昔聴いていた好きなバンド"の音楽と似ている感じがする。特定のバンドというわけではなく、成長するにつれ忘れていった、心を鷲掴みにするようなダイレクトな感情表現をこのバンドが何の衒いもなく繰り広げているからかもしれかい。照りつける太陽の下、冬の砂漠。広い空間の中で、感情が一つ。そしてそれを聴く私。それ以外に何もない。
Pickup: Flood
8位 Kamaal Williams - Wu Hen
私がUKインディジャズを好きなのは、ジャズだけだとシックになり過ぎがちなところを、クラブやソウルの要素でちょうどよく中和してくれるからだ。それを具現化したのが、まさに本作。"Big Rick"などに顕著だが、エレクトロニクスがスペイシーなフューチャリスティック感を強め、管楽器と見事な融和をとる。私の大好きなAlfa Mistよりもさらにストリート感が有り、今後いかようにも変化していける可能性が広がっている。
7位 Nothing - The Great Dismal
古き良きシューゲイザーを、しっかり2020年の演奏と音響で聴かせる充実の力作。曲も陰鬱ながらとても力強く嫌味が無いし、でもマッチョすぎることもないという絶妙な塩梅。強いて言うなら、"Catch A Fade"だけボーカルのミックスが前に出過ぎていてギターポップ感が強すぎ、他の曲から浮いてるような気もする。でもそれ以外は完璧な内容。
Pickup: Say Less
6位 The Neighbourhood - Chip Chrome & The Mono-tones
SNSに疲れ現代生活に疑問を持ったフロントマンが突如顔面を銀色(=クロムメッキ)に染め、陰鬱なアコースティックバラードに転向した4th。周りのメンバーは困惑を隠せない様子だが、このフロントマンは曲を書けるので付いていくしかないでしょ。シンプルにエモい。信用して良いのか分からない胡散臭さもまた魅力の一つ。
Pickup: Devil's Advocate, Stargazing
5位 Mystery Jets - A Billion Heartbeats
本格派。この一言に尽きる。とにかく大真面目に王道のUKロックを貫く。メロディも歌も歌詞も演奏も非常に力強く、でも抜くところはしっかり抜いて、文句の付け所がない。こういうアルバムがUKから全く出ない現状で「UKロック復活!」といくら言われても全くピンと来ないのは私だけなのか…?
Pickup: Cenotaph
4位 Tom Misch & Yussef Dayes - What Kinda Music
Yussef Dayesの立体的なプレイに、Tom Mischのストーリーテリング力が加わり鬼に金棒。"Lift Off"や"Kyiv"のような即興感溢れるスリリングな演奏や、"What Kinda Music"や"Festival“のようにTom節の物語性の強い陰鬱な曲もあれば、"Nightrider"や"The Real"のようにヒップホップ/ネオソウル風の小洒落た曲もあり、完全無欠の内容。UKインディジャズの表街道を邁進する、最も甘い果実の一つ。
Pickup: What Kinda Music
3位 Happyness - Floatr
前作はピアノを用いた優美な曲調が多く、ソングライティングの可能性を追求したシンガーソングライター気質を感じさせるものだった。その要素を担っていたBenji Compstonが離脱した後の本作は思いっ切りセンチメンタルなメロディをこれでもかと聴かせる振り切ったアルバム。全曲、とにかくメロディが良い。エモい音楽が好きな私としては好きにならずにはいられない名作。
Pickup: Seeing Eye Dog
2位 The Strokes - The New Abnormal
このアルバムはマジで過小評価されている。Julian Casablancasの書く曲は1stの頃から、独特の優雅さと哀感と悲痛さに溢れている。The VoidzのHuman Sadnessでそれが最高潮に達したが、本作はストロークスのマナーの上でそれが全開になっている。メジャーコードなのにどうしようもなく胸を抉るこの哀感。バッドエンドのラブロマンス映画のラストシーン・エンドロールをアルバム通して見せられているような。完璧な作品。
Pickup: Ode To The Mets
1位 The 1975 - Notes On A Conditional Form
このアルバムを理解することは、一人の人間を理解することに似ている。ある日と別の日で全く別人のような振る舞いを見せることもあれば、でもそれらに一貫性があるようにも思える。コイツ嫌い!と思うこともあれば、好き!という想いがとめどなく溢れることもある。このアルバムを「分裂症的!」と一言で片付けることはできる。そしてそれは事実だ。Mattew Healyみたいなとりわけ感受性が高くややこしい人間が自分の全てを曝け出してるのだから。
でも、一人のアーティストが自分の内面を100%曝け出している姿を「分裂症的!」の一言で片付けてしまい、さっさと次のアーティストの次のアルバムに移る、それで良いのだろうか? 一人の人間を理解しようとする姿勢すら持たない"忙しい"リスナーが、百枚のアルバムを聴いて果たして何を感じ取れるのだろうか? 私には、このアルバムが私たちリスナーの根本的姿勢を問うているようにも感じる。
Pickup: I Think There's Something You Should Know
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