
2022年 ベスト聴き逃しアルバム
毎年必ず漏れがある。ここに挙げた6枚は2022年のうちに聴いておかなかったことを後悔するほど気に入っている。年間ベスト作り直そうかな。
Nightlands 『Moonshine』(2022)

アンビエント/ドリームポップとして紹介されていることが多いが、それに異論は無い。ただ睡眠導入剤的な薄いアンビエントとは真逆で、どちらかと言えば曲のインパクトの強さで勝負するタイプ。特にコーラスの過激な重ね方によって生まれるメロディの押し出しの強さが印象的。あくまで一曲一曲の出来の良さで勝負しようという意志と、それに見合った曲が揃っている。
Shabason & Krgovich 『At Scaramouche』(2022)

Krgovichの2021年作は愛聴していて年間ベストにも入れていたが、今年は聴き逃していた。控えめなソフィスティポップを極めた男。余計なドラマ性や過剰な情緒を省き、心地良さだけを極めている。その例としてパーカッションがボサノバ的な拍で鳴っている曲や、ツリーチャイムが効果的にAOR感を煽る曲も多い。親しみやすい要素を使って作り上げた、日常的に愛聴できる、付き合いが長くなりそうな作品(Shabasonの21年作も聴いたが、これまた良かった)。
Bearcubs 『Weather Reports』(2022)

孤独で心地良い深夜のベッドルームと、一瞬の中に永遠があるクラブ特有の浮遊感。それを丁寧に合わせていく。今作は前作に比べ、リズム面でのアプローチが多彩になり、メロディもリッチな輝きが増している。Jamie Isaacの不在をしばし忘れさせてくれる。
Sean Nicholas Savage 『Shine』(2022)

Mac DeMarco組のチルアウト人なのは間違いないが、この人には愛が溢れている。ただの弾き語りなのにどうしようもなく胸がいっぱいになってくる。名作とか傑作とか言うつもりはないが、自分にとって大切な作品になる予感。というか好き。
DIIIV 『Live At The Murmrr Theatre』(2022)

2017年のアコースティックライブアルバム。スタジオアルバムより輪郭がはっきりしていて入門編に向いている。かなり聴き心地が良い。今年出るだろう4thでどう来るか楽しみ。
Preoccupations 『Arrangements』(2022)

典型的な「一聴では良さが分かりにくいタイプ」なので要注意。2010年代中盤はエモやシューゲイザー、そしてKilling Jokeに影響を受けたポストパンクバンドがアメリカ/カナダ各地で乱立していたが、このバンドはその残党として堂々たる金字塔を作り上げた。金属片と鈍器が組み合わさって出来たとんでもなく歪で非キャッチーな音の塊は、安易な理解や共感を拒みながら耳を引っ掻き続ける。そんな簡単に分かられてたまるか。この得体の知れないドス黒さこそポストパンクの神性だ。今年それを感じさせてくれたのは本作とFontaines D.C.だけ。いま年間ベスト作ったら5位くらいには入るし、レビュー書くなら9点にすると思う。