最近聴いているアルバム2021.10
今月は少し多め。
R.E.M. - Out Of Time (1991)
ロック史上最も自然体で世界と戦ったバンドの代表作。あっけに取られるほどシンプルで爽やかなのに、90'sオルタナ隆盛期の初々しい自信と悲愴な覚悟を強く感じさせる。その軽やかさが、こちらの凝り固まった心の奥底にもダイレクトに浸透し、強く心を揺さぶる。バンコクの街景色とこのアルバムは死ぬほど合うということも付け加えたい。自信がなくても自分の足で自分の人生を歩んでいかないといけない。
Alice In Chains - Dirt (1992)
Turnstileの『Glow On』が大好きだ。あれを聴いて思い出したアルバムその1。AICは「ドラッグ中毒で…」「ドロドロした…」と言われがちだが、本質的にはかなりポップなバンドだ。Layne StaleyとJerry Cantrellのツインボーカルハーモニー、更にそのボーカルと多彩なギターとのハーモニー。"Them Bones"などを聴けば分かるが、それを最重要視していたバンドであった。そこが『Glow On』と重なる。
Royal Headache - High (2015)
『Glow On』を聴いて思い出したアルバムその2。強烈にエモい名盤。突き抜けるほどキャッチーだが、たまにメロウな曲があり、そっちの方がバンドの本質を端的に表している。その感覚がTurnstileと共通する。”形だけのロック”、”自己目的化したロック”に溢れかえり、「こんなんがロックならロックなんてゴミだよ」時代に入った2021年。Turnstileみたいな"必然的に"ロックをやる本物が全てを蹴散らしてほしい。
James Blake - Enough Thunder (2012)
街灯も無い静寂の深夜、ビートが暗闇の彼方まで響き渡る。ひたすら抽象的な音に乗せて、真のコネクトを求める彼の叫びがこだまする。応答は無い。私は今でもこのEPこそが彼の最高傑作であり、真骨頂だと思っている。
Hurts - Desire (2017)
曲・歌・詞・音すべて完全無欠。全部2人で作っている。究極のポップミュージック。こういう素晴らしく素敵なアルバムが、単に「ダサい」「終わったバンド」というだけで見逃されるのは、こればっかりは本当にリスナーの怠慢でしかない。ロックが終わろうが復活しようがマジでどうでもいい。本物のポップさえあればいい。Boyfriend
Beach House - 7 (2018)
ドリームポップ/シューゲイザーに求めるもの。現世と彼岸の境界を滲ませる曖昧なテクスチャー。時代/社会からの解脱。意味の消失。コネクトの拒絶。来世での再会。その全てがこのバンドにはある。ドン引きするような実力を持つ正統バンドによって他の紛い物は駆逐され、ドリームポップは終止符を打たれた。本作はやや現世寄りではあるが、それこそSlowdiveの諸作と比べても全く引けを取らない完成度の高さがある。
Ulver - Flowers Of Evil (2020)
昔から演劇的・宗教的・史実的とでも言うべき独特の魅力があったが、本作からも強烈な情念・色気が匂い立つ。1990年代のDepeche ModeやU2やNine Inch Nailsといった”特別”なバンドたちを思い出す。世界一硬派なシンセポップ。
Bearcubs - Early Hours (2020)
クラブとベッドルームが溶け合っていく。The xx『I See You』とLANY『LANY』の中間をいくような音と言えば華やかに聞こえるが、実際には華やかさよりも孤独を感じさせる。深夜のゆりかもめ。正直に言えば特に個性的でも先鋭的でもないが、その密かな孤独がただただ愛おしい。