最近聴いているアルバム2022.06
The Cure 『Faith』 (1979)
自分にゴシックの美学を叩き込んでくれたアルバム。周りの人間が次々死んでいくが、自分にはなぜか死神はやってこない。ただただ死ぬまで生かされている。自分はどうすればいいのか?その苦悶が反映されている。私の中ではJoy Division『Closer』よりも高い位置に屹立する傑作。
Noah And The Whale 『The First Days Of Spring』 (2009)
フロントマンの失恋(Laura Marlingとの)をテーマにしたアルバム。情念がシリアスなギターの響きに痛切に乗り移り、引き込まれる。メロディも美しい。ボブディランでいう『血の轍』的作品。しかしアルバム後半は少し回復しかけポジティブな雰囲気で終わる。聴き終わりの余韻は爽やかでかなり良い。隠れた名作。
The Pineapple Thief 『Dissolution』 (2018)
激しさで誤魔化されがちなポストプログレにおいて、このバンドは演奏力と展開力を武器に、繊細で薄暗いUK独特の美しさを醸し出す。フックとマーケティングにまみれた現代ロックに慣れた耳では、こういうアルバムの良さをすぐ理解することは困難だし、私もそうなりつつある。危ない。
Muse 『Simulation Theory』 (2018)
逆に派手さを追求し続けているのがMuse。このアルバムはとにかく「惜しい」印象。ディストピア的世界観と、ヒップホップ/トラップ/ゴスペル/ダブを取り入れたバンド史上最も実験的な音("Break It To Me", "Thought Contagion", "Dig Down"など)は、凄く良いアイデアだし冒険だと思う。
だけどそこに顔を出す中途半端な「ロック」曲("Pressure", "Get Up And Fight", "Blockades")。このバンドのファンは結局ヘヴィなリフなら何でも喜ぶ人が多いイメージなので、バンドもそこまで冒険出来ないのかも、というのは分かる。でもこれらを収録せず、他に実験的な曲を作って入れていれば、Muse新時代の狙いが明確な傑作になっていたと思う。惜しい。
No-Man 『Love You To Bits』(2019)
Steven WilsonとTim Bownessによるデュオの7枚目のアルバム。Stevenが音を作り、Timがボーカルと歌詞を担っている。1993年のデビュー作は某雑誌にて「The Smith以来最高のバンド」と呼ばれたが、明らかにそういうタイプのバンドではない。本作は組曲の2部構成で、2部にわたって同じモチーフを繰り返す。A面5曲はトランス/ダンス/シンセポップ風、B面5曲はインダストリアル/エレクトロ/アートポップ風になっている。
「全リスナー必聴!」とかいうタイプのアルバムではなく、Steven Wilsonという人間の作る音楽を好きな人が、彼の作風の多彩さや繋がりを楽しむために聴けば良い。実際、ここでの実験が2021年のソロ傑作『The Future Bites』に活かされているなと感じる場面は多い。
Twenty One Pilots 『Scaled And Icy (Livestream Version)』 (2021)
2021年のポップなアルバムのスタジオライブバージョン。ライブといっても、アルバムのリワーク版として新鮮な気持ちで楽しめる。"Saturday" ~ "Level Of Concern" ~ "Ride"のファンキーな流れは興奮した。アルバム版より遥かにグルーヴと引き込み力がある。音楽的な素地がしっかりした人達だということが改めてよく分かる。
Oliver Beardmore 『Not Thinking, Yet Floating EP』 (2022)
最高のギターポップ/シューゲイザー。多くを語る必要のない青春の音。若干中後期Cocteau Twin/初期Slowdiveの淡いゴシックな雰囲気があるのも良い。バイタリティの無い人向けの音楽。"With The Heavens On Your Side"に勝てるギターポップは存在しないと思う。フルアルバムが待ち遠しい。
今月もVinylを購入。Gomezの大名盤は超オシャレなジャケットと限定盤2枚組重量盤で所有の喜びが満たされる。