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Deafheaven - Infinite Granite (2021)

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10/10
★★★★★★★★★★


ギターロックの「柔」と「剛」を完璧に体現する圧巻の名盤に仕上がっている。これは単なる「変化作」などではなく、正当進化の末の最高傑作だ。これまでの作品は本作を作り上げる為の試作品だったとさえ言いたくなる。

デスボイス・グロウル・シャウトの類を(ほぼ)使わないボーカルと、ディレイを掛けたクリーントーンのギターがまず目立つ。ツインペダル(ツーバス?)もほとんど使われていない。変化の理由については、「シャウトがそもそもしっくりきていなかった」「ライブ終わりは毎回喉がボロボロになっていた」ことを明らかにしている。Slowdive, Low, Cave In, M83などをフェイバリットに挙げる彼らだけに、本作の境地に辿り着いたのもいわば必然だったのだと思う。

それにより、シューゲイザー特有のダークブルーの透明感・寂寞の哀感が増し、もはや並び立つもののない絶海の光景が繰り広げられている。近年だとSlowdive『Slowdive』(2017)にも匹敵するような、透き通るように美しい陰鬱。ギターポップからメタルまで、全てが調和されたグラデーション。全てがあるべきところに帰結していく。演奏・構成・録音・ソングライティング、いずれも非の打ち所がない。

いくら聴いても欠点らしい欠点がおよそ見つからない。一つのロックアルバムとして普遍的な名盤と言ってしまって全く問題無いと思う。

"Shellstar", "In Blur", "Great Mass Of Color"の3曲で見事なスタートを切る。現世と彼岸の狭間を薫風のごとく駆け抜けるこれらの曲を聴くだけで、この新しい方向性の正しさ・説得力をすぐに確認することができる。

続くインスト"Neptune Raining Diamonds"でバーミューダの星空に舞い上がり、完璧な流れで"Lament For Wasps"と"Villain"になだれ込む。哀感溢れる激情を恍惚の下で爽やかに滾らせるこの2曲は、Deafheavenのバンドとしての最高到達点だろう。クリーンなギターアルペジオに導かれ、至福の陰鬱を楽しむ。"Villain"の終盤では激情が閾値に達し、満を辞してシャウト。最高級のカタルシス。

"The Gnashing"と"Other Language"。KellyとShivのギターが星雲のように混ざり合い、火花を散らす。あらゆる感情が渾然一体となった素晴らしい演奏。本作はどの曲を聴いてもその曲が一番良い曲のように思える。そんな作品は滅多に無い。

アルバムを締め括るのは、深夜の大海に揺られ、大気圏外に放り出される名曲"Mombasa"。前半部ではアコギまで使って静謐な世界を作り上げるが、ラストで激情が解放される。そこでは凄まじく浮世離れした演奏を聴かせる。完璧なラスト。


Bandcampは非ハイレゾ。Apple Musicでは空間オーディオによって本作の世界を最大限に楽しむことが出来る。




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