展覧会をつくりあげるプロセス:展覧会チラシをつくる
展覧会のテーマや出品する作品が決まったら、まずとりかかるのはチラシなどの広報物デザインです。その広報物はどのように作られるでしょうか?
展覧会チラシとは?
展覧会とは見方を変えて見ると、入場料を払ってもらい観てもらうための商品でもあります。その展覧会に来てもらうためには、それを宣伝するためのチラシなどが必要になってきますよね。
日本国内だけでも年間であまりにも多くの展覧会が開催されています。その中で、自分の美術館や企画の展覧会を選んで来ていただくためには広報活動は必要不可欠です。
展覧会の趣旨や内容に誤解がないように、けどかっこよく、もしくは華やかに目を引くチラシを作るべく、キュレーターや広報担当者、デザイナーや印刷会社はたくさん試行錯誤し、良いものをつくる努力をしています。
そしてそれは展覧会の顔であり、展覧会会場とお客さまをつなぐ重要な役割をもっています。
そしてこのチラシの作成というのが、私たち展覧会の作り手たちにとって、展覧会をつくりあげるプロセスの中で1番最初に行うチームワークではないかと思っています。
展覧会のチラシを構成する要素
展覧会タイトル
メインヴィジュアル
会期などの展覧会情報
展覧会についての簡単な説明・リード文
関連イベント情報
この情報を揃えるまでが、外部の方との調整などひと仕事ではありますが、上記の要素が揃ったら、デザイナーさんにお願いしてデザインを作っていただきます!
デザイナーさんはどのように選ぶ?
ところで、そのデザインをつくってくださるデザイナーさんはどのように決められると思いますか?
どのようなデザイナーさんにお願いするかはその美術館など依頼者次第ではありますが、たとえばコンペで何名かのデザイナーさんにデザイン案を提案していただいて、その中で、依頼者の意図や狙いと近い方向性のデザイナーさんにお願いするということもあります。
またそのようなコンペはせずに、これまでのデザイナーさんの過去のお仕事を見て、今回はこのデザイナーさんにお願いしたい!と決めてお願いすることもあります。
どちらにしろ、展覧会においてデザインをお願いする場合、チラシだけでなく、展覧会カタログや、ときには販売するグッズのデザインまでお願いすることがあるので、チラシのような1枚でインパクトのあるものを作ることができるだけでなく、本の形を実現できるデザイナーさん、そのような経験のある方などをお願いすることが多いです。
そしてこのデザイナーさんとのお仕事をはじめ、展覧会をつくりあげるためにはチームをつくっていく必要があります。そう考えると、デザイナーさんを決めて働きデザインを作り始めるのは、チームづくりの1番最初のように思います。
チラシをつくるプロセス
では実際にチラシはどのように作られていくのでしょうか?
コンペにしろそうでないにしろ、デザイン案をいくつか提案していただいたら、その中から、この方向性という案を、デザイナーとキュレーターが話し合ってひとつ選び、そこから細かい調整をしていきます。
デザイナーさんは細かなレイアウトの調整、キュレーターは美術館の内外への確認作業を行います。
また、ここでデザイナーさんは、紙面上のデザインやレイアウトはもちろん、紙の種類なども選んでくださいます。
そしてデザインが固まったら、印刷会社にデザインを入れて、試しにテスト刷りを出していただきます(これを色校正と言います)。
インクの色がイメージ通りか、また絵画など実際の作品と色味や印象が近いか、など、ときには作品を実際に見ながら、作品とチラシ上のイメージの色などを合わせていきます。
このときはデザイナーさんや印刷所の営業さん、実際に印刷データを調整するプリンティング・ディレクターさんなど立ち会いのもと、「全体的に赤色(マゼンダ)を取り払おう」とか、「もっと黒がしまるように」とかの指示出しをします。
その後も何度か色校正を出していただいて、納得いくクオリティの色味になったら、最終的なデータを入れて、あとは印刷会社から納品いただくのを待つことになります。
このチラシづくりの作業は、展覧会が始まる約半年前くらいから、遅くとも3ヶ月前くらいに行われる美術館が多いと思います。ここからキュレーターたちはだんだん忙しくなっていくことになります!