『はせがわくんきらいや』---本の中の障害者06
題名:はせがわくんきらいや
著者:長谷川集平
出版:復刊ドットコム
ISBN:978-4835440583
白黒で,版画のような強烈な画風.感情とも思考とも区別が付かない何かが湧き上がる.誰かと「はせがわくんきらいや論」を語り合いたくなる.著者の長谷川集平はミュージシャンでもあるので,「日常を描くフォークであり,理不尽を嘆くブルースであり,想いを叫ぶロックであり,天まで響く讃美歌である」そんな作品と評したい.76年第3回創作えほん新人賞受賞作.
「長谷川くん」は「ぼく」の同級生.鼻を垂らし,歯がガタガタ,手足がひょろひょろ,目がどこを向いているのかわからない.下手だけれども楽しそうにピアノを弾く.
長谷川くんの母親は「ぼく」に「ヒ素という毒がはいったミルクを飲んで体を壊してしまった」と説明するが,「ぼく」にはよく分からない.
山登り,虫取り,野球,鉄棒…一緒に遊んでも手がかかる長谷川くん.先生に頼まれたし,長谷川くんの母親からアイスをもらったからという理由もあるけれど,一緒にいると面倒なのだけれども,長谷川くんと一緒にいる「ぼく」の様子が描かれている.
最後のシーン.
ぼくは泣いている長谷川くんを背負い,まっすぐ向こうを見つめて道路を歩いている.
長谷川くんなんか
きらいや。
大だいだいだい
だあいきらい。
画面左外に続いている道の先に何があるのだろう?
何故「ぼく」は長谷川くんを背負わねばならないのだろう?
この先も背負い続けるのだろうか?
ひょっとすると,長谷川くんに背負われているのだろうか?
三度も絶版状態になりながら,絵葉書版が通販では売れ続け,復刊ドットコムから復刊されるという不死身の絵本.とにかく一度手にとって鑑賞して欲しい作品です.