『さかさまになっちゃうの』---本の中の障害者02
初出:Facebook(2017/08/19)
【児童文学における読字障害シリーズ】(嘘
題名:『さかさまになっちゃうの』
原題:"Back to Front and Upside Down!"
クレア・アレクサンダー 作,福本 友美子 訳
出版社:BL出版
ISBN:978-4776405641
(あらすじ)%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
放課後に校長先生の誕生パーティーがある事がわかります.
それぞれがバースデーカードを書くことにします.
みんなは担任のお手本をスラスラと書き写すのに,主人公のアルフィーにはできません.
それを,友達に打ち明け,午後の授業が始まった時に先生に打明けます.
「私も苦手なの」というお友達のミミと二人で,先生から指導を受けます.
「砂に指で字を書く」「筆でキャンパスに字を書く」などというお約束の方法です.
なんとかカードを完成させ,校長先生に喜んでもらいます.
その後,アルフィーとミミは先生に教えてもらいながらも字を書く練習を楽しみながら頑張ります.
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おそらく,多くの大人は「解らない時には聞く勇気を持ちなさい」という訓話として解釈をするだろう.
しかし,実際の学校で友達からバカにされる事はないのだろうか?先生に「説明を聞いてないからだろう?」って怒られる事はないのだろうか?
この作品の隠れテーマは「孤独との対峙」なのではないだろうか?
最も印象的なシーンは,次のようなものである.
見開きの全景は真っ黒.
右下にしょんぼりとしたアルフィーが小さく描かれ,
左上に白字で「おなかが きゅーんと いたみます」などと文字描写が少し.
この状況ののち,アルフィーは友達に相談し,先生に打ち明ける.
「相談する勇気」の基底には裏切られる事を承知で相手を信頼する覚悟がある.
「質問する勇気」の基底には「代わりにやってくれる人は居ない」という覚悟がある.
アルフィーは「友達・親・教師がなんとかしてくれる」という殻には篭らなかったのだ.
「勇気を持て」という言葉だけで勇気を持てたら苦労はしない.
アルフィーはどんな育ちをしてきたのだろう?
そこがこの作品の本質.
「読字障害への理解」「困ったら相談する事」などという生温いものではない.可愛い画風とは裏腹に,「思い通りできない時の壮絶な孤独感」「孤独を踏まえて行動する勇気」を味わってもらいたい.
教師なら,「見えないところで苦しんで居て,次に会う前に自殺しているかも?」くらいの覚悟で子どもと接しなくちゃね.おそらく,ほとんどの子ども達は孤独と戦っている.
妄想のスピンオフ.
ミミはアルフィーの事を好きなんですよ.
本当はできているのに,アルフィーのそばに居たかったの.
そう解釈をすると,二人が並んで努力している姿が一層微笑ましい.可愛いラブストーリーに見えてきます.