note de 小説「時間旅行者レポート」その13
ここは1900年
19世紀末。
20世紀が
間もなくやってくる
パリの市街地。
町ゆく人たちは
時代劇さながらの
格好をしている。
滑稽に見えるが
彼らにとっては
当たり前の日常を
過ごしている。
そしてボクが被っている
この「飛行機帽子」は
少しだけ流行が早すぎた
らしい。
08のやつ
余計に目立ってるじゃないか。
確実に道行く人の視線と
興味を引いている。
目立つこと。
ボクは相変わらず
不慣れである。
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ボクは自然と
町行く女性を
目で追ってていた。
彼女たちのの恰好に
大きな違いが見てとれる
からだ。
コルセットで
全身を固めているであろう
窮屈そうな衣装の女性が
だいたい年齢層が高いマダムたち。
そして
流行の先端をいく
若いパリジェンヌたちは
どちらかというと
スポーティに見える。
そうか
この時代がファッションの
転換点なのだ、と
府に落ちた。
流行に疎い
ボクが見ても
それは分かる。
アヴァン・ココ・シャネル
22世紀の世の中にも
燦然と輝く
高級ブランドの発信地。
この1900年あたりの
フランスが発祥なのだ。
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ボクはシャンゼリゼ大通りを
気持ちだけ目立たぬように
歩いている。
あまりに
この帽子が目立つので
小走りに歩いている。
それにしても・・・
排気ガスの不愉快さが全くない。
爽快な気持ちだ。
大都会で森林浴をするような。
ボクはそんな不思議な
経験をしている。
たしかに
22世紀のミュンヘンも
排ガスは存在しない。
とうの昔に
ガソリン車は規制されたからだ。
しかし100%電気自動車が
街を走るミュンヘンとは
何かが違う。
何かが・・・
そう、この時代は
大気汚染がほぼない。
喫煙を始めたばかりの
少年の肺機能のように
ほぼ健全なのだ。
なんといっても
排出されるCo2は
馬の吐く息だけだから。
22世紀のミュンヘンでは
「地球はもうあとがない」
という危機感があって排ガスが
一切無くなった。
21世紀前半に始められた
SDG,s運動を皮切りに
人類は地球に優しく
なり始めた。
Chinaが意外にも
環境保護の先端を行って
大成功を治めた
敬意がある。
そして最後まで抵抗したのが
極東ヤーパンと
Amerika
商業中心主義から抜け出さなかった
国家や企業がやがて
衰退していった過程だった。
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はなしをもとに戻すが
この時代は
まだ大気汚染のそれが
極めて低い。
産業革命が始まった直後
だとしても、まだ守れる
地球環境が大いに存在するのだ。
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目立ちすぎるのを嫌って
飛行機帽子を脱ごうか
脱ぐまいかを迷いつつ
ぼくは
シャンゼリゼ通りを
歩き続けた。
パリ万国博覧会 1900年
4月14日~11月12日
まで開催されていたその会場まで
歩いていた。
目印はなんと行っても
エッフェル塔。
そして
大型観覧車
「グランド・ルー・ド・パリ」
である。
この時代は
あまり大きな建物がないため
目的地までは検索すこともなく
簡単にいくことが出来る。
パビリオンが近づくにつれ
人の往来もさかんに
なってきた。
絶対にボクが未来人だと
ばれてはならない。
要らぬ心配だと
思いながらも
時間旅行犯罪者の
レッテルを貼られないように
苦心していた。
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会場内は当然に
多国籍の言語が飛び交う。
これは英語。
お!DEUTSCHEだ。
さまざまなパビリオンで
各国の言語が飛び交う。
ん?
なんだ?
奇妙な言葉だ・・・
聞こえてきたのは
「ドーモ DOMO!
イヤーオカゲサマデ」
ってどこの国だろう?
気になったボクは
そのパビリオンに
入った。
そこは
東洋。
まったく西洋とは
世界が違う。
なんだろう?
これは・・
KIMONO?
服か?
花鳥風月?
そうか、森羅万象
生けとし生けるもの
すべて神なのだ・・
そしてこれは?
陶磁器?
美しい・・・
その小さな器に
世界が。
世界がそこにある!
UKIYOE?
浮世絵?
いけない・・
寒気を抑えられなかった。
同じ金色だとも
ベルサイユの鏡の間と
この浮世絵のそれは
同じだ。
なのに
控えめだ。
大好きだ!
色褪せていない本当の
錦絵たち。
学長が大の親日家だという
理由がわかる気がした。
あぁ、ヤーパンか。
当時のヤパーニッシュは
自然と共に人生があったのだ
それなのに
未来の彼らときたら・・
モッタイナイ。
勿体ない人たちだ。
西洋の絢爛豪華な華美とは
違う極東ヤーパンの美しさに
ボクは釘付けだった。
未来を詳しく知るボクにとって
ここで見る彼らはとても
尊くみえた。
そして
ぼく以外にこの
「ジャポンパビリオン」から
離れられない人たちがいた。
知ってるぞ。
着物に釘付けの男は。
フェルメールだな。
そして
浮世絵に魅了されている彼が
グスタフ・クリムト
その人だ。
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当然に声をかけることなんて
できない。
『あなたは将来売れますから』
という感じでアドバイスして
あげたいが・・・
彼らの作品が
ヤーパンの文化に触発されているのは
歴史が教えてくれているとおりだ。
Auf Wiedersehn(さよなら)と
独り言を言い残し
ボクは
イギリス人の小説家を見つけるため
ジャポンパビリオンを後にした。
それにしても。
あの・・・
あのGeisha Girlsって。
とても娼婦には
みえないな。
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つづきます。
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