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「あの占い師が行った四つの事 (# ゚Д゚)【note de ショート】」

京都は祇園。
ふるきよき京都の風情が残っている街。

海外、県外からの観光客が愛してやまない街。

ぼくも好きだ。
いや、好きだった。

こんど京都に帰ることがあっても
なにかのタイミングで京都観光することがあったとしても

祇園はハズすだろう。

美しい街灯。
店やさんから流れてくるお香の香り
料亭のめしのいいにおい。
それはいまや自分の世界から消え去った。

かの美しい古都で起こった
怒りとも恥ずかしさともわからない経験を
いまから語ろう。



実は、大学の頃、京都にいました。
ぼく、地元の短大からの編入だったので
だからちょうど2年。

こころの底から編入試験受けてよかったと
おもいました。

名にし負う京都、幕末ロマンの京都
歴史と最先端のマッチした
日本の代名詞、京都!

とくになにか学びたいという
理由ではなかったんですよ。
すくなくとも若干2年で卒業して
社会にでなきゃならないことへの
抵抗・・というのがむしろ強かったなぁ。

編入、つまり既に出来上がった所へ
新しく飛び込んでいく・・

なかなか順応できませんでしたね。
それに輪をかけた人見知りと
孤独主義。
だから別段寂しさってのは感じませんでした。



望まざるともできるもの


そんな5月の春。うららかな鴨川のほとり。

バイト以外とくにやることもないときは
土手で本を読んだり、近くの三条スタバで・・・
とくにやることもなかったので本を読んでました。

新刊の本を近くのジュンク堂書店で買って
ひたすら読みまくる。
その繰り返しの行動に対し、不憫に感じた人が
いたのでしょう。

声をかけてくれた人がいます。
ありきたりですが、女性。
おなじ大学だ、とのことでした。

「いつも難しい顔して本読んでるんですね。」

忘れもしません。
彼女とのはじめての会話の走り出しがこれでした。

「あ、はぁ・・・えっと」
「わたしお邪魔した?だったらごめんなさい。君ぃ校内でも
独りっぽかったから。」

※ 最近は「ボッチ」というらしいですね。
いややなぁ、これ。ボッチって。なんか惨めだ。

孤独主義ではありますが誰とも話さない生活は
モノガナシイ。

孤独と孤立と孤高はそれぞれ全然ちがう。

でも周囲に会わせて自分をよそおうのは
しんどいし、許せない。

などなど初めてあった人、しかも女性にこんなことまで
話してしまいました。
俗に言う「ボッチ」のダムが放水したように。

気づけばもうよる。

京阪三条駅に明かりがついていました。

彼女も実は編入生。
実家の広島から京都にやって来た。

おなじ電波を出してたのでぼくを見つけたのだ、と
不思議なことをいっていた。

またあおうね。

あ、うん。またガッコで・・・

別れ際、出町柳行きの電車に彼女が。
宇治の親戚の家に居候の僕はちょうど発車寸前の
淀屋橋行きの特急にのりました。


つきあうことになりました。


ボッチめでたく、京都で彼女を作ることができました。
孤独主義を貫いていたぼくも世間をみるメガネの
色が明るく、季節も手伝ってパァッと輝き始めました。

初夏。
京都の夏は祇園祭で始まります。五山の送り火で夏を終えるのです。


ここで

ぼくの祇園エリア嫌いのクライマックスです。
どきどきしてお読みください。

彼女とのデート。
祇園を選びました。

カラオケ行ったり、
鴨川ぶらぶらしたり、とあまり
お金をかけないように。

夕方、彼女がぼくに言いました。

「ね~ぇ、この近くにすっご~くよく当たる
占いの先生がおるんじゃってー。
一緒にみてもらおうよー。」

僕は一切のアンチ占い主義者。
当然、こたえはNO!でした。

でしたが行くことになってしまったんです。
イニシアチブはすべて彼女。
広島の女は気が強いんじゃ、と彼女。

祇園の夜。
どこからともなくちんこらちんこら
楽しそうなお囃子が聞こえてきます。
高級車が行き交います。
ホンモノの芸妓さんが通り過ぎます。

そう祇園。
ここは東京の銀座なんですね。

その一角。
ぽつんと小さなスペースに小さな老婆が
テーブル一脚座っていました。

「易」とあるので占い師でしょう。

しかも長蛇の列!殆どがカップルか女子でした。
相当な人気です。

刻一刻と順番が近づいてきます。

遠くから老婆が占った前世の姿を
告げているようです。

うっさんくせ〜!
だって聞こえてくる話、全部インターナショナル
なんすよ!

やれお前はオランダの〜
やれお前は古代ペルシアの王族の〜
やれあなたはモロッコの蛇使いの〜

など。
アホかいな…

そんな舐めた占いで、エ!5000 円!?

なぁ、俺やっぱやめとくわ、お前一人で
みてもらいー。

そんなこと聞いてくれるわけもありません。

くそうっ
僕らの番になりました。
しぶしぶおカネを叩きつけるように
置きました。1万円ですよ。
バイトの何日分?
考えたくもありませんでした。

イヤイヤ感、しぶしぶ感は確実に
老婆に伝わっていたと思います。

占いはまず彼女から。

「ねえ、水晶玉って使わんの?」と僕。
「しぃっ!静かにせよ」と老婆。
「ちょっ、やめてよ」と彼女。

「どうやったら前世わかるんスカ?」と僕。
「……」老婆は無言を貫く。
集中してるんだろうか。


やがて老婆は歯のない口を開ける。
「…。よいか」
「お前はフランス語を話しておる。大勢の人間と
騒ぎ、踊っておる。」
「鏡がある部屋。そうじゃ、部屋中に鏡。
これは鏡の間じゃよ。」
「お前はフランスの貴族の令嬢じゃったわー」

彼女、思わず放心。
ぼく、思わず吹き出す。プッて。

ギロリと睨まれた。
そりゃそうだ。営業妨害だし。

次、僕の番がきた。

同じように占い出す。
ん〜…ん!
うぅ〜ん…む!

なんかしんどそうな。
アンチ占いとはいえ、ここまで来ると
何を言われるのかチョッとだけドキドキ
してきた。


出た。
出た老婆からのカイコウ一番!



「お前は何と古代中国の王族じゃ!」



それだけ?
そう、終わりだ、と老婆。


終わってしまった。


当然ですな!
ここからはひと悶着ありました!

くだらねー
金返せ!5000 円やぞこのババア!

くだらぬとはなんや!
金返すか、このガキ!



とうとう彼女にいさめられ
僕は折れました。


帰ろうとした矢先
老婆はこんな事を言い放ちました。

「ええか!ガキ!お前は古代中国の王族が履いとった
サンダルや!ええか!そいつ、犬のババ(う○ち)踏んで『うわ、なんでやねん汚ねっ』つってそのサンダル
捨てよったさかいに。それでお前は産まれ落ちたー!
がばばはは…」

これには流石に彼女もキレた!
だって背中が震えてるもん。


あれ?
笑いこらえてたのか。


あれから時間が流れた。

京都から遠いこの街で
今は暮らしている。
会社から前に京都への転勤を打診された事が
あったが断った事もある。

結婚して子供が二人。
幸せに暮らしている。

夫婦ゲンカ?
まれにありますね。
たいてい僕が負けますよ。

嫁には切り札がありますしね。
そうとっておきの切り札が


「おぉい!古代中国のサンダルー!」


これにやられます、いつも。

あの占い師が行った事。

1 僕に一生モノの恥辱を味あわせたこと
2 嫁に無敵の飛び道具を授けた事
3 僕を少しだけ謙虚に…してくれた事?
4 なんやかんやで当時の彼女と当時の僕との距離     が縮まった事。
 

最後まで読んでくださってありがとうございます

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こにー ❚育児世代の革作家
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