うっかり漏洩はデータが端末に保存されているから起きる
情報漏洩のケースは下記2つに大別される。
ケース1:悪意ある情報窃取(攻撃窃取)
ケース2:悪意ない紛失漏洩(うっかり漏洩)
今回はケース2についての情報漏洩について考察する。悪意のないうっかりミスから生じる漏洩なので「うっかり漏洩」と名付ける。
ゼロトラストFTAから「悪意のある攻撃窃取」と「うっかり漏洩」の発生率はほぼ同じであることがわかる。
そして「うっかり漏洩」が発生する原因は下記4つのケースであり、発生率と共に示す。
セキュアブラウザや仮想デスクトップの利用で
これらの解析から、「うっかり漏洩」は、端末内にファイルとして機密情報が存在しなければ、ケース2は発生しないということがわかる。
では「端末にデータを保存しないで業務を行う」ためにはどういう手法があるだろうか。最もポピュラーなのは「セキュアブラウザ」や「仮想デスクトップ」などであろう。
閲覧や入力などはPC端末から操作することは可能だ。しかしデータの実体はサーバ上にある。端末にはデータは保存されていない。
3種類のうっかり漏洩
うっかり漏洩の情報は主に次の3種類である。(IPA「内部不正による情報セキュリティインシデント実態調査」より) 紛失で漏洩する情報は次のようなものだ。
これらの情報は本当に社員のパソコンにファイルとして保存しなければならないものであろうか。もしパソコンにファイルとして保存しなくて良いのであれば、情報漏洩のリスクは大幅に減少させることが出来る。
顧客情報
顧客情報の漏洩で最も問題になるのは、個人情報保護法により漏洩のおそれがある時点で、個人情報保護委員会への報告が義務付けられている。しかし改正個人情報保護法により、報告が義務付けられる個人情報の範囲は現実的に見直されている。
うっかり漏洩で、届出が必要な個人情報漏洩のおそれの定義は下記3項目だ。
業務でこれらのデータを扱うことがあっても、自分のパソコン端末にこれらの個人情報ファイルを保存したり、印刷し持ち歩くことは必要だろうか。
技術情報
技術情報(マニュアルや設計書など)は、作成者は自分のパソコンにファイルを保存する必要はあるだろう。
しかしその技術情報(マニュアルや設計書)を閲覧する大多数の社員は、自分のパソコンにダウンロード保存する必要性は必ずしもない。
またタブレット端末やモバイルPCなどの持ち出しも最近許可されることが増えているため、紙に印刷しなくても(タブレットやPCが手元にあれば)代わりに使えるケースも増えているだろう。
営業企画
営業企画の情報も同様だ。作成した担当者のPCには資料は保存されている必要はあるだろう。しかしこれらの企画書を評価したり利用する大多数の社員のPC端末に保存されている必要はないだろう。
リスクが10分の1に
セキュアブラウザや仮想デスクトップなどの手法により、社員の端末に機密情報(顧客情報、技術情報、営業企画など)を保存させない場合を従来の場合と比較する。
今後のセキュリティツールのトレンドに
ここ数年の在宅ワークの広がりで、モバイルPCの持ち出しが許可されやすくなったことと、クラウドサービスなどWebを使ったサービスが広がっていることから、情報漏洩を防ぐ手段として、セキュアブラウザや仮想デスクトップは今後更に利用が拡大していくことであろう。
参考資料