覚えていた方が良い医学用語①
「PS値」
主治医への報告書を書いていて色々と気が付いたことがあります。
例えば、抗がん剤の副作用で「しびれ」があります。
原因となる薬剤はオキサリプラチンである可能性が高いと言われています。
この状態を主治医に伝える時の表現方法ですが、例を示すと
化学療法誘発性末梢神経障害性疼痛であるオキサリプラチンのしびれですが
手足がビリビリしてほとんど外出せず、家では寝ている時間が多かった気がします
これはこれで良いのですが、直すとすれば
◎化学療法誘発性末梢神経障害性疼痛→CIPN
略せるなら、略した方が楽です。
ちなみに、緩和医療のガイドラインにもCIPNがガンガン出てきます。
ネットでしびれについて調べる時も、CIPNを使えば色々便利です。
◎寝ている時間が多かった→抗がん剤投与後5日間はPS3、6日から9日まではPS2、10日から13日はPS1でした。
PSはパフォーマンスステイタスの略で、活動量の制限を示す医学用語です。
PS「0」➡以前と変わらず日常生活を送れている
PS「1」➡激しい活動の制限はあるが歩行可能で軽作業や座っての作業は可能である。
PS「2」➡歩行可能で、身の回りのことは可能だが作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS「3」➡限られた自分の身の回りのことしかできない。
日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS「4」➡全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。
完全にベッドか椅子で過ごす
上記は国立がん研究センター「がん情報サービス」用語集を参照。
実はこのPS値を正しく理解しているかどうかが、がん治療においてものすごく重要だと最近気が付きました。
初めから理解できていれば、もっと楽だったはずです。
まず、医学用語を使う理由ですが医療従事者と患者が同じ基準を持つことで、認識のズレがほとんど無くなるということですが、患者がPS値の意味を正しく理解せずに診察時に使うとかえってマズいことになります。
実例を挙げます。
まず、PS値の説明をしているカッコの中に
「日中の」50%以上とか、以下とか書いてあります。
この日中に注目して下さい。
日中とは色々な解釈がありますが、原則として9時~18時が日中で良いかと思います。
この9時間の中で4時間横になっている患者がいたとします。
9時間のうちの4時間ですから、PSは2です。
しかし、1日24時間の50%、すなわち12時間を基準としてしまうと話は別になります。
睡眠時間が9時間で、日中4時間横になっていたら24時間のうち13時間、横になっている時間は54%。PSは3になります。
実はPSが2か3では大きく変わることがあります。
治療ガイドラインでは
「PSが3以上だと、原則抗がん剤治療は行うべきではない」
となっているのです。
本来、PS2である人が3と判断され、抗がん剤治療ができないと
判断されることもありますし、逆もあります。
まあ、抗がん剤治療が中止といっても1週間延期するだけのことが
多いのですが。
抗がん剤投与後5日間はPS3(日中の50%以上寝ている)
6日から9日まではPS2(日中の50%以上は起きているが、作業は✖)
10日から13日はPS1(活動制限はあるが、動ける)でした。
なお、日中とは9時~18時とします。
このように書くのが、一番良いかと思います。
PS値は時間の経過と共に変化しますので。
この数値をどう評価するかは、主治医に任せるべきでしょう。
主治医は血液検査により肝機能障害と腎機能障害の有無は把握していますが
患者が自宅でどう過ごしているかは分かりません。
患者がどのように活動量を伝えるか。
主治医も看護師も薬剤師もPS値といえば理解してくれます。
あとは患者がPS値の意味を正しく理解して、使いこなせられれば一つの事例を全ての医療従事者が統一基準で評価してくれます。