航空会社のSAF利用による排出量削減
7月12日付の日経産業新聞に、ANAがユーザーを巻き込んだ形でSAF(Sustainable Aviation Fuel)を活用した排出量削減に取り組んでいるという記事がありました。
ANAに限らず、ICAO(国際民間航空機関)に加盟している航空会社は、2020年以降はGHG排出量を増加させないことに合意しており、以下の4つの対策を講じるものとしています。
1.新技術の導入(新型機材等)
2.運行方式の改善
3.代替燃料の活用に向けた取組
4.経済的手法の検討推進
記事にあるANAの取り組みは、3.に当たります。
国際規格として認められているSAFは7種類あり、現在研究開発が続いていますが、やはり課題は「コスト」と「デリバリー」
ANAはその「コスト」を克服するために、スコープ3カテゴリー6「出張」の排出量を削減したいユーザーと協業するということでしょう。
伊藤忠のサスティナビリティ推進部長代行、中村賢司氏の「航空機での出張が再開しつつある中、自社のCO2削減を減らす取り組みの一環として参加を決めた」というコメントが物語っています。
「飛び恥」とも言われるものの、島国の日本としては、飛行機による移動は避けることができません。特に商社のように、海外出張が当たり前のセクターでは切実な問題。
デリバリーに関しても、日本の空港で給油できないとなれば、ANA、JALだけでなく、海外のエアラインも就航することができなくなります。
エアライン、業界の垣根を越えて、この問題に取り組んでもらいたいです。
ただ、ここでふと疑問に思ったのが、SAFによるフライトは「ゼロカウントでよいのだろうか」ということ。
これまで、「カーボンニュートラル○○」はNGですよ、と何度もご案内してきました。SAFも「カーボンニュートラル」でよいのでしょうか。
結果から申しますと、OKです。
決定的な違いは、「クレジットによるオフセット」ではなく「バイオマス由来の直接燃焼」である点です。
GHGプロコトルによると、バイオマスの燃焼による排出量は、スコープに含めず「別途報告」することとしています。ですので、バリューチェーン排出量には含まれないことになります。
厳密に言うと、SAFを製造するためにCO2を排出することになると思いますので、その分はスコープ3カテゴリー3で算定する必要があります。(再エネで賄えば、これについてもゼロカウントできますが)
ただ、それについては、エアライン(あるいはSAFメーカー)が原単位を公表してくれないと、知りようがありません。CDPの報告に当たっては、全体の排出量の5%に満たなければ「少量排出源」としてカウントしなくても問題ないので、そこまで心配することはないかと。
ということで、海外のエアラインも安心して日本へのフライトを維持してくれるよう、このANAの取り組み、成功してもらいたいものですね。
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